2008年07月11日
国際メディアセンターは「巨大なイヌ小屋」か?

地元特産のメロンやスイカも食べ放題
北海道洞爺湖サミットを現地から伝えるため世界中から訪れていた記者たちの取材拠点──ルスツリゾートの遊園地側のホテルに隣接して建てられた「国際メディアセンター」(以下IMC)は、各国の時差に配慮して24時間稼働の体制がとられていた。
中に足を踏み入れてみると、まさにメディアの「国際見本市」状態。国内外の新聞社、テレビ局、マガジン社、ネット媒体…。私が訪れたのはサミット最終日の7月9日(水)だが、福田総理の議長報告が午後から予定されていることもあって、その混み具合はピークに達している感があった。
そこで各国の記者たちは何をやっているのか? サミット会場は、ここから10数km離れた洞爺湖である。そこには、さらに外務省に選び抜かれた大手メディアの記者やカメラマンが「代表取材」を行なっている。ほとんどの記者たちはIMCで足止めを喰らっているようなものだ。しかし、記者たちは一向に気にしない。会議の進捗や内容、イベントの模様、ホスト画像などは外務省の専用ホームページで随時アップされ、登録記者としてIDを持っていれば、そこに自由にログインし、情報と画像を入手できるからだ。

センター内では、首脳たちの動勢をモニターで見ることができる
つまりIMCの記者たちは、居ながらにして「玄関ネタ」(役所や官庁が記者クラブなどに配布する行政資料)をゲットし、あとは好き勝手に記事を書き、ネットを通して自分の会社に送り込むということになる。要は、馬鹿でかい「記者クラブ」そのものである。
この「記者クラブ」、毎回どうかは知らないが実に大盤振る舞いなのである。高速ネット回線つきのブースやワークスペースの提供はもちろんだが、飲食に関しても全て無料で、さまざまな便宜が図られていた。ワークスペースの脇のブースに常時補充されるオニギリやサンドイッチ、各種の清涼飲料水。メロンやスイカ、スナック類、スウィーツも食べ放題。さらに驚かされたのは隣のホテルの高級レストラン(5カ所)までタダで利用できたことだ。
ホテルの黒服が記者たちのためにオニギリを運ぶ
まだある。カメラ修理のサポートデスクに携帯電話の貸し出しetc…。サミット記念のお土産的な「プレスキット」(シチズン協賛の腕時計つき)まで貰える役得つき──。同行した記者といろいろと歩き回り、しっかり「タダ飯」も試してみながら、私は奇妙な感覚に襲われていた。
記者たちへのサービスは、そのまま企業や北海道、開催地の宣伝につながるということはよく分かる。しかし「過ぎたるは及ばざるがごとし」だ。大手中堅ともなれば年収1千数百万円の高給を得ている人種である。ただでさえメディア人には「特権階級」的意識をお持ちの方々が多い。そういう類いの皆さんをひたすらヨイショしてどうする──。
今回、IMCに入場を許された記者たちの個人情報は外務省に全て把握されている。その数、約5000人。首からICチップが埋め込まれたプレスタグをぶら下げ、幾重のものセキュリティチェックをくぐり抜け、颯爽とIMCを闊歩している記者たち。毎年、各国のメディアセンターを渡り歩いている御仁も少なくないに違いない。エリートジャーナリスト? だが別の言い方をすれば、実際のところ彼らは当局の管理下に置かれた広報スタッフのようなもの。ん? さすればここはまるで巨大な犬小屋ということになりはしまいか。
飼われていることに気づいているかどうかはともかく、居心地がいいとイヌは吠えなくなる──。なにか、急にタダ飯がまずく感じられてきた。

IMCの前庭ではエコカーをメディアに宣伝

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Posted by 北方ジャーナル at 01:55│Comments(0)
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