
2008年01月03日
脳梗塞を克服して無病息災。驚きの治療

※【写真】取材に応じる中村記念病院の中村博彦理事長(07年12月中旬)
新年に、お互いの無病息災を祈って、医療関係の話題をひとつ。
脳とは不思議な臓器である──。医療の現場を取材すると勉強になることが何かと多いが、昨今の脳神経外科の最先端に触れると、生命というものの奥深さに思わず感じ入ってしまう。
NHKが札幌医科大学研究チームの最新成果を報じたあの番組、脳梗塞における再生医療の驚くべき臨床結果のレポートに問い合わせが殺到したのは、関係者が知る語りぐさ。限定的な臨床段階ゆえ、保険適用にも一般治療にも導入できないものの、その可能性には多くの人が期待を寄せることとなった。
何しろ、自らの骨髄から採った再生細胞を利用すると、血管が詰まった先で壊死していたはずの神経細胞がよみがえるのだ──。当のドクターが驚くほど嘘のようなホントの話。実用化されれば回復期リハ治療における大きな選択肢として朗報となるに違いない。
そして急性期の脳梗塞治療においては、神経細胞の壊死をいかに防ぐかが大きなポイントになる。この点については、新薬の開発が著しい。05年10月に保険適用された血栓を溶かす新薬「tPA(組織性プラスミノーゲン活性化因子)」などは、そのいい例だ。
ただ優れた薬というのは、常にその裏の顔も持っている。血栓を溶かすということは、タイミングによっては博打のようなもの。時間が経過し、梗塞を起こした先の脳細胞が壊死してしまっている場合などは、血流が再開されても、それを受け取るべき毛細血管や細胞が失われているため、出血を起こすリスクが高まってしまうのだ。
受け入れ先への迅速な搬送と的確な症状判断が何より必要なのだが、その点で注目されているのが、医仁会中村記念病院の中村博彦理事長を中心とする、札幌市医師会所属の脳神経外科のドクターたちだ。専門医同士で話し合い、適用範囲のコンセンサスをつくり、受け入れ態勢を決めておく。これは患者にとって頼もしい取り組みだ。
聞けば全国初の事例とのこと。その新薬の卓効ぶりやドクターたちの連携ぶりについては当の中村理事長に取材し、2月号の「医療ワイド」に掲載したので、ぜひご覧いただきたい。
オシム監督や長島茂雄の例を挙げるまでもなく、脳梗塞は一瞬にしてその人の人生を損ないかねない。だが、対応が的確ならかなりの率で助かり、予後も回復できるケースが増えている。これは知っておいて損しないライフライン情報のひとつだろう。
それにしても、人間の脳というのは、つくづく精妙に出来ている。そして得体のしれない可能性に満ちている──。
Posted by 北方ジャーナル at 10:01│Comments(0)
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