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2007年12月11日

食品偽装発覚の原点「ミートホープ事件」の内部告発者を実名取材

食品偽装発覚の原点「ミートホープ事件」の内部告発者を実名取材
苫小牧の街並を眼下に赤羽さんの話を聞いた(07年11月下旬)

 企業のトップが頭を下げる姿を見飽きた感のある一連の食品偽装問題だが、今回の“野火”の発火点は、誰もが知るように「ミートホープ事件」だった。クズ肉を加工し「牛」と称して大量に販売していたことなどで、世間の耳目を集めたことは、いまだ記憶に新しい。

 この事件が世間に明るみに出たのは、内部告発者の力によるところが大きい。そして、そのなかでも中心的な役割を果たしていたのが赤羽喜六さん(72)という人物だ。彼は、10年ほど同社に勤務した元常務で、とりわけ本州方面の販路拡大に力を尽くした営業幹部だった。

 その赤羽さんが、退職を決意しながら本格的に道や農水省、マスコミに情報提供を行なっていき、その結果が、朝日新聞の第一報スクープにつながった。以後の過熱報道については説明の必要がないだろう。

 本誌は今回、その赤羽さん本人にロングインタビューを行ない、まもなく発売される1月号に内容を収録した。ちなみに本人の了解のもとで顔写真や実名も掲載してある。

「いままで顔を隠していたのに今頃なんで出てくるのか?」という問いには、こう答えておこう。

「編集部からお願いしての掲載です。今回の事件で内部告発者が果たした役割や苦悩などを率直に伝えるに当たって、もはや匿名である必要はないのではと、説得しました。そのうえで、そのままを伝えてくれれば、というのが赤羽さんの唯一のリクエストでした」

 苫小牧のホテル上層階で、市内を眺めながら赤羽さんは「私はネ、偽装の片棒担いだまま、人生終われんかったですよ」と言った。「誰が自分の居た会社に弓なんか引きたいもんかネ」とも口にした。


食品偽装発覚の原点「ミートホープ事件」の内部告発者を実名取材

ミートホープ汐見工場で同社への破産通告に
目を走らせる赤羽さん(07年7月下旬)




 背負ってしまった十字架と知ってしまった事実の間で揺れ動く内部告発者、口を拭っても心の中は穏やかにはならず、告発するには相当な覚悟がいる。そのような引き裂かれる思いは、できれば誰も味わいたくない。──だが、時にそういう役回りを演じねばならないひとたちもいる。今回の赤羽さんのように。

 食品偽装告発の発火点となった「赤羽証言」に、おそらく相当多くのマスコミが世話になっているはずである。赤羽さんも、さぞメディアに感謝しているかと思えばさにあらず。

「最初マスコミは、こっちがいくら証言しても及び腰。唯一DNA鑑定含めて頑張ってくれたのが朝日だったネ。スクープ抜かれたら、今度は大挙して押し寄せてきて、礼儀も何もない。私に関する警察情報が出た時も、こちら側には何にも確認や取材をしないで書く。正直、ありがたかったですが、迷惑も被ったね、けっこう」

 と、辛辣だ。

 今回のインタビューでも述べられているが、メディアや行政の対応がもっと早く適切であれば、これほど大きな事件になってはいなかったという慚愧の思いが、そこにある。

 行為の悪質さも目立ったが、周囲の怠慢が傷を深くしたケースという印象も否めない。

 裏話はもちろんだが、興味深い指摘は、まだまだあった。

 ──そんなわけで、続きは、どうぞ全6ページの本誌1月号で。
   (※本誌の写真と文は小笠原記者)。


■関連記事

「北方ジャーナル」2008年1月号
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ミートホープ元常務が、監督官庁に“斬り込み”
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「北方ジャーナル」2008年2月号
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Posted by 北方ジャーナル at 09:59│Comments(3)
この記事へのコメント
はじめまして
僕もあの赤羽氏のテレビ番組をみました。
世間の反応がどうだったのか気になり、インターネットの反応を見ていて、こちらのサイトの記事を読みました。
僕自身同じ食品業界にいるものとして一般の皆さんとは少し違う目線で見ていました。

あの方は経営幹部として何をしていたんだろうかということに驚いたというのが正直の感想です。
僕は食品業界のいち品質担当者ですが、社内のリスクを客観的に会社の経営層に報告し、食品のリスクを外に出さないのが役割です。
しかし、僕たちのようないち担当レベルの権限というのは限られておりますが、やはり経営上の判断や決済をもつ人は会社法の中でその権利と責任の行使が認められている立場とは大きく異なります。

ミートホープ社の食肉偽装はそもそも原材料内容を偽って、多くの取引業者に嘘をついて取引をしていたということですから、その情報源となる商品規格書を正すためにできることは沢山あります。

そうすれば営業上の取引は行われなかったはずです。
農政事務所に現物を持ち込む・・・という場面がありますが、あれは完全に彼の間違いです。
もし、本当に偽装食肉をこれ以上出荷したくないと本気で考えれば、まず取引の前に真実の原産地証明や肉の種類と原材料配合規格書、商品規格書を取引先に送っていれば取引先は絶対に成立しません。
要は、取引先がこれは牛肉以外の複数の肉が混じった加工食肉だと認識すれば、その評価によって取引するし、小売の現場でもその商品カルテの情報により消費者に正しい表示をつけて販売することになるので、このような偽装の構造は成立しません。

そういう現実の問題に社内を追い込んで、組織内を立て直し正しい方向に巻き込むようにすることはできるはずです。
この問題が何年間も社長たった一人の采配でごまかしが通せるほど、日本国内の食品流通の取引の現場は簡単ではありません。
あの報道で隠れているのは、赤羽氏自身も含め組織的によほどしっかりとしたチームワークで取引上一番重要な品質情報を不正に運用し続け黙認した結果の問題だともいえるのです。
食品流通の正常な取引の中に会社を引きずり込まなければ会社は現実と向き合えません。
それは農政事務所ではできない芸当です。

彼は経営幹部として実は内部で肝心なことを何もしていないように思います。
だから、あんなに苦しんでいると思います。

彼以上に苦しい食品の現場で戦っている同業の仲間は沢山います。
赤羽氏よりも権限も何も無い女性社員でも、
食品の安全を守るために社内の組織と戦っている人は沢山います。

食品の安全は告発によってつくられるものではありません。食品の製造現場で組織的につくられます。
Posted by 鱗太郎 at 2008年12月05日 01:13
コメントありがとうございました。食品業界の内部関係者ならではの視点で詳しくご指摘いただき、参考になりました。確かに食品の安全は内部告発ではなく、本来は製造現場で組織的につくられなければならいないものだと思います。ただ、この事件を地元で間近に取材した記者の一人としては、ミートホープ社は、売上こそ、それなりに大きかったものの「組織」としての呈を成していなかったという印象を強く覚えております。役職者や部局は、それなりに配置されておりましたが、どこまでいっても田中社長という「肉屋のオヤジ」とその他大勢というくくりでしかなかったという感じです。知識不足や窮迫感のなかで選択肢を見出せず赤羽氏たちが内部告発に向かったことは事実でしょう。しかし、それもまた分かる気がするのです。また機会がありましたら、どうぞご連絡ください。貴重なご意見、重ねて感謝申し上げます。
Posted by HJ at 2008年12月05日 19:37
北方ジャーナル様
辛らつなことを書いてしまい申し上げありません。
あのテレビ報道をみていて、非常に悲しくなったのは女性従業員の方が赤羽氏にシグナルを送る場面がありました。
多くの一般の従業員の方は、自分の職場を生活のための守りたいし、社会的に間違ったことは正したいと思っているのです。
だから、赤羽氏に改善してほしい期待したはずなのです。
ミートホープ社の社長を断罪し会社を解体まで追い込んで社会的に抹殺してほしいと望んでいたわけではありません。
あの会社の従業員はミートホープ社の職歴がずっと障害になってつきまというはずです。

だから、そうならないために皆でなんとか正すためのエネルギーがくすぶっていたし、その方法を考える必要があったということです。
ミートホープ社と赤羽氏の行動の顛末は「食の現場で不正を働けばああなる」という社会的な見せしめと恐怖を食品流通の現場に植えつけることにはなりますが、それは更なる巧妙な不正と隠蔽の連鎖生み出す結果になります。

食の安全と適正化の問題というのは社会的に非常に大きな責任があります。
それはたとえ経営者によらず、食の製造に従事している一人ひとりに日々直接かかわっているテーマでもあるのです。
だからこそ、現場のボトムアップでこの問題を内部から本質的に変わるプロセスが絶対に必要なのです。
そうでなければ食品現場のベクトルが正しい方向にはむいていきません。

なぜなら日本の食品流通の市場競争の現場では安全管理や品質にかかるコストをまともに原価に反映できないという矛盾もまだまだ抱えているからです。

今、食品流通の現場では正統な方向にベクトルをむけるべく現場プロセスの改善を必死に取り組んでいます。
僕自身、今食品流通の組織の中で、多くの食品企業と向き合い、現場の改善をさせてもらっています。
そして、食流全体が不正やリスクを生み出さない現場のプロセスをつくれるようにそれぞれの担当者といっしょに取り組んでいます。

最後に、僕が20代のころまだ食品業界に入ったばかりのころ、折りしも大腸菌O157が社会問題化している時期でした。
同じく現場の不正の実態や食品安全の意識の低さに憤りを感じ、
なんとかしようと正義感で内部告発をしようと思ったことがあります。
そして、ある報道機関の記者と接見したことがあります。
その記者は僕の食品現場の実態を最後までじっと聞いてくれました。
しかし最後に記者は言いました、
「その実態を正すことができるのはあなたのような人たちです。正直私たちの記事にはそのような力はない、だから、あなたはこれから知識と知恵、技術を身につけ、どうかその組織で力をもつ立場になってください。だから、この記事は書けません。」
僕はこの言葉によって自分の役割と責任を強く意識するようになりました。
40になった今でも常に意識しています。

食の安全は恐怖心や強い規制によってつくられるものではありません。
現場の問題をただす力をもっているのはそこに携わる一人ひとりの意識とそれを組織の中でプロセスに組み立てていく知恵と工夫です。
これを踏み違えると私たちが求める食の安全が実態のない空虚なものになってしまいます。

そういう取り組みも理解してほしくてこちらに投稿させていただきました。
Posted by 鱗太郎 at 2008年12月06日 05:10
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