月刊誌「北方ジャーナル」公式ブログ

　内装や看板など、すべて元ホームレスたちの手作りという（札幌市北区の「たまりば」）

　ホームレス生活から社会復帰した人たちが切り盛りする立ち飲み居酒屋が21日夕、札幌市北区に開店する。7年前から道内でホームレス支援を続けている自立支援事業所なんもさサポート（札幌市北区、中塚忠康代表）が、路上生活経験者の雇用創出と地域の活性化を目的に今年6月から開店準備を進めてきた。開業を目前に控えたスタッフらは、厨房の準備などに汗を流しながら「地域の人たちに気軽に立ち寄って欲しい」と呼びかけている。

　21日午後5時に開店する『たまりば』（札幌市北区北23西5）。今春までカレー店が営業していたビルの店舗スペースを確保し、なんもさサポートのメンバーらで内装工事や什器の手配などを手がけた。同代表の中塚忠康さん（68）が、大阪市のいわゆるあいりん地区で眼にした労働者向けの立ち飲み店をヒントに「おじさん（元ホームレス）たちと地域の人たちが一緒になって安く飲める店」の運営を計画、メニューを絞って単価を抑えるセルフサービスの居酒屋という構想に到った。路上出身者16人が働くコミュニティ食堂「あそびば」の厨房スタッフとホール係から各1人、計2人をオープニングスタッフに抜擢し、当面年中無休で営業する。最終的には6人ほどを雇用する考え。

　「一杯やっておでんを突ついても500円。3杯飲んで焼き鳥を腹いっぱい食べても1000円以下」と、中塚さん。食べ物と飲み物の価格をそれぞれ統一し、おでん5品盛り合わせと焼き鳥5本盛り合わせを各300円に、お酒（発泡酒、清酒、酎ハイ）とソフトドリンク（コーラ、烏龍茶、レモン炭酸飲料）を各200円に設定した。27坪（約90㎡）の店内に高脚のテーブルを4つ置き、最大40人ほどが入店できる造りとなっている。21日の開店に備え、18日から2日間、元ホームレスらがシミュレーション営業に協力した。



　オープニングスタッフの一人・仙石一仁さん（24）は、今年4月から約1カ月間を路上で過ごした。後志管内の高校を卒業後、札幌市内のガソリンスタンドに勤務していたが、職場の売上金を盗んだと疑われ、退職せざるを得なくなったという。身に憶えのない被害額を天引きされた最後の給料を手に、着の身着のままでホームレス生活に。5月下旬、空腹に耐えきれず量販店でグミ菓子を万引きして逮捕された。市内在住の家族が身元を引き受けてくれなかったため、支援を申し出たなんもさサポートの力を借りることにし、9月まで「あそびば」のホール係を務めた。「ここで経験を積んで調理師免許を取り、将来は自分で飲食店を持ちたい」と、夢を語る。「おすすめは、スタッフ厳選のおでん。安く飲めておいしいお店にするので、ぜひ多くの人たちに気軽に立ち寄って欲しい」――。

　『たまりば』は、札幌市北区北23条西5丁目1-5 コンフォートN23ビル1階。午後5時開店、同10時終了。年中無休。問い合わせは、自立支援事業所なんもさサポートへ（電話011・757・2920）。　　（ん）