月刊誌「北方ジャーナル」公式ブログ

　積雪3mの民家で雪かき。開始30分と経たぬうちに汗がうっすら（21日午前、夕張市常盤）

　21日午前、東京都のマンガ家が夕張市の民家を訪ね、雪かきのボランティアに汗を流した。成人向けマンガなどの販売を規制する都の青少年健全育成条例について、都内のジャーナリストが猪瀬直樹同副知事に面会を申し込んだところ、「夕張で雪かきしたら会ってやる」と挑発されたため、同ジャーナリストに先んじて“18禁作品”を本領とするマンガ家が雪かきを決行、近く副知事へのインタビューに臨むことになる。

　初めて訪問した夕張で雪かきを体験することになったのは、東京都豊島区のマンガ家・浦嶋嶺至（うらしま・れいじ）さん（46）。昨年12月、知己のジャーナリスト昼間たかしさんが簡易投稿サイト「ツイッター」で猪瀬副知事とやり取りし、「雪かき」の条件を引き出した。浦嶋さん自身、かねてから条例改定の経緯に疑問を持っていたため、「条件をクリアしたら会って貰えるか」と都に確認したところ、副知事側が「会う」と約束したという。

　「表現の自由うんぬんを議論しようとは思わない」と、浦嶋さん。「エロマンガにはすでに区分陳列や18禁標示などが義務づけられていて、それにはとくに反対せずにやってきた。猪瀬さんの発言が問題なのは、事実をねじ曲げていること」と、厳しく批判する。「条例改正の根拠として、成人向け作品が子供マンガと同じ棚に並んでるとか、誰でも眼に触れるような形で売られてるとかの虚偽情報を流し、危機感を煽った。そういうやり方が問題なんです。ぜひ、直接お会いしてそのあたりを質したい」―。さらには、面会の条件として「雪かき」を提示したことにも疑問がある。



「猪瀬さん自身も1回だけ雪かきやったとか仰言ってますが、彼とかぼくらとかがちょっと来て1回、2回やったところで地域の本質的な問題は解決するのか。やるんならもっと組織化するとか、本腰入れて取り組むべきで、ああいう議論の場で『どうせ行かないだろう』みたいに安易に引き合いに出すような問題じゃないのでは」



　21日は、現地の社会福祉協議会の紹介で市内の民家2軒の除雪を引き受けた。同社協の野尻勗事務局長ら職員と、ツイッターで浦嶋さんと知り合った札幌市豊平区の男性（33）も協力し、午前中には約3mの積雪と格闘。本格的な雪かきに挑むのは初めてという浦嶋さんは、「今のところ疲れはないけど、明日あたり筋肉痛に襲われるかも」と苦笑する。報道陣を含む10人超の雪かきチーム来訪に、同所で一人暮らしの秋森みつ子さん（80）は「ありがたいことです」と頭を下げ、浦嶋さん夫妻らに干し柿やみかんを振る舞いながら「山菜の時期には旨いフキを食べさせるから、またおいで」と声をかけていた。



　午後3時までに2軒の雪かきを終え、充分以上に条件をクリアした浦嶋さんは「2月中にも副知事にお会いし、インタビューの様子をウェブ上などで公開したい」と、早くも取材の構想を練り始めている様子。都副知事室では、「雪かきをやっていただいた以上、必ずお会いします」と話している。　　（ん）