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2009年01月14日

国と道から指導受けてもストップしない「無料診療」

国と道から指導受けてもストップしない「無料診療」
話題となったデンタルクリニックとNPO事務所は同フロアの隣同士

 道新がスクープし、12月以後匿名で報道を続けてきた「無料診療」の歯科医院とNPO法人だが、周知のように前者は「デンタルライラック」(前田英一院長)、後者が「CMケア機構」(仁科雅晴理事長)といい、札幌市内都心部の雑居ビルの同じフロアに居を構えている。

 しばし時の話題となっていた両者だが、道新は国(北海道厚生局)がデンタルライラックに行政指導を行なった1月8日を境に実名報道に切り替えた。それまでの匿名扱いは、実名告知による宣伝効果を恐れたのか、プライバシーに配慮していたためかはともかく、編集上のひとつの判断が印象に残ったことは確かだ。ちなみにこの道新の「方針転換」以前にネット上や関係者の間では、実名が飛び交っていたものだった。

「弱者救済」の名のもとにデンタルクリニックとNPOと組み合わせ無料診療を実現していた、この取り組みには前記のように「健康保険法違反」というレッドカードが出された。この展開を受け、NPO法人と、歯科医院を運営する医療法人の監督官庁である道は13日、両法人が違法な無料診療に関与しているとして、改善を求める行政指導を行なうとともに、改善計画などの文書を提出するよう求めるに至った。指導に従わなかった場合は、特定非営利活動促進法(NPO法)と医療法に基づく立ち入り検査を行なう方針で、国に引き続き道からもNGが出されたかっこうだ。

国と道から指導受けてもストップしない「無料診療」
国から行政指導を受けたデンタルライラックが入居するビル(札幌市中央区)

 本誌もこの事件を追い、まもなく発売される2月号で関連記事を掲載しているが、報道から行政指導までの流れを辿ってみると、舛添厚労相まで登場しコメントした事件だっただけに、いつもは腰が重い国も今回については対応が早かった印象がある。

 結果としてメディアバッシングの末にNGを喰らった今回の取り組みだが、取材を進めてみた感想として、是非はともかく仕組みとしてよく考えられているという印象を覚えた。法律の網の目をどうくぐるかという、うがった見方をすればなおさらだ。ただ仁科理事長が犯した初歩的なミスがあるとすれば“労務料”の金額を患者の自己負担金と同額にしたことだろう。

「あれは違反になりますよ。仁科さんも馬鹿なことをした。何も同額じゃなくたっていいじゃないですか。定額にしておけば、絶対つかまえられませんよ」

 こう指摘するのは業界事情通の某氏。例えば歯科治療における保険診療の場合であれば、自己負担金の平均を調べそれを基準に労務料を設定しておけば、摘発されにくかっただろうというのだ。

 ──と聞いて思わず私も納得しかけたが、オイオイちょっと待て! そういう方法にしても違法な「割引診療」に当るではないか。いずれにしてもシステムとして自己負担金をダンピングする行為は、健康保険法の主旨や精神から逸脱する。同じ保険に入っていながら受診する医療機関によって患者負担が異なるというのでは被保険者間での公平性を欠くことになる。法律対策や抜け道を考えればいいというものではない。

 ただ歯科診療のケースにおいては、緊急性に欠ける、あるいはコストをかけられないとして歯科を受診しないまま疾患を抱えている人が相当数存在することも確かだ。是非はともかく今回の取り組み、あるいは「ビジネスモデル」が、そのような人たちに相当アピールしたことは間違いない。実際、デンタルライラックは、昨年(08年)7月に開業してわずか半年あまりの間に3000人ものカルテを集めたと言われており、NPOの会員に至っては6000人にものぼるというから驚きだ。

 国と道から指導を受けたにもかかわらず、現在も同医院では無料診療が続けられているとされ、いまのところ仁科理事長は「違法ではなく、これまでの基本方針を変えるつもりはない」と強気の構えのようだが、さて──。



Posted by 北方ジャーナル at 12:26│Comments(0)
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