北菓楼 創業25年来の悲願「札幌本館」を3月18日オープン
3月18日にオープンする北菓楼札幌本館
菓子製造大手ホリ(本社砂川・堀昭社長)グループの中核を担い、ヒット商品「北海道開拓おかき」などを手掛ける北菓楼(同)は3月18日、札幌市中央区の旧道立文書館別館跡に「北菓楼札幌本館」をオープンする。それに先立つ14日夕、メディア向けの内覧会が行なわれた。同社にとって札幌での路面店開業は、創業以来25年越しの悲願だった。
同店のコンセプトを安藤忠雄氏自らが解説
感無量の表情を浮かべる関係者ら(左から堀太一取締役営業部長、建築家安藤忠雄氏、堀昭社長)
この程、同社の和洋菓子専門店としてリニューアルされた旧道立文書館別館は、1926年に道内初の本格的な図書館である北海道庁立図書館として建てられた歴史的建造物。ジャイアントオーダーと呼ばれる複数階にまたがった柱の構成や、直線を用いた幾何学的意匠が特徴というセセッション様式でデザインされた外壁は歴史的価値が高いとされ、1990年には札幌市の「さっぽろ・ふるさと文化百選」にも選ばれている。
竣工から41年間図書館として活用された後は、北海道立美術館(後に道立三岸好太郎美術館に改称)となり、同美術館が現所在地(同市中央区北2条西15丁目)に移転した4年後の1987年から昨年まで、道立文書館別館として利用されるようになった。
札幌の文化、芸術の歴史と共に歩んだこの建物を、万人から親しまれるようなお菓子の店として新たな命を吹き込んだのが、日本を代表する建築家の一人である安藤忠雄氏。この店舗設計にあたり安藤氏は内覧会で「古いものは甦らせなければならない。古いものの良さを活かしながら、北海道の地で誇りある建物を作ろうという思いで手掛けた」と語った。
地元砂川と小樽に2店の路面店を持ち、新千歳空港にも直営店を展開。札幌でも丸井今井、三越、大丸、エスタの主要百貨店内に店を構えている同社だが、札幌市内の直営路面店はこれまで出店されずにいた。
これについて同社企画部の大野重定課長は、
「当社は北海道が持つ魅力を、和と洋の2種類のお菓子を通じて発信してきた会社。なので、旗艦店となる札幌の路面店は北海道らしさと、和菓子、洋菓子のどちらにもイメージが偏らない店作りにこだわっていた。そうした中、旧文書館別館が売却されるとの情報を得て、この建物が当社が目指していた店作りのコンセプトに合致していた事から取得を決め、今日の開業に至った」
と話している。
その同社が札幌の旗艦店で目指すコンセプトとは、お菓子を通じて生まれる人々の笑顔と、札幌の文化・芸術の歴史を紡ぎ合わせた憩いの社交場(サロン)の創出だ。
内覧会の冒頭、挨拶に立った堀昭社長は、旧文書館別館の取得や店舗としての改装にあたり様々な支援、協力を得た大勢の関係者にひとしきり感謝の言葉を述べた後、「札幌の方々に心から喜んで頂けるような店づくりを目指していきます」と、感無量の表情を浮かべた。
同店限定商品のクロワッサンシュー『夢句路輪賛(ゆめくろわっさん)』
その同店の規模は、1階のショップスペースで517平方メートル。2階のカフェスペースが333平方メートル。この店舗のみ限定で販売される、クロワッサンシューの『夢句路輪賛(ゆめくろわっさん)』、チョコサンドクッキー『北海道廳立圖書館』、クラシックショコラ『夢がさね』の3品は、プレミア感も相まって今後同店の目玉商品として定着しそうだ。
ここ数年、道内菓子大手が札幌市中心部に大型の直営路面店を構える動きが加速している。2013年6月には、「白い恋人」の石屋製菓(本社札幌・石水創社長)が運営する「イシヤショップ」「イシヤカフェ」を中核店舗とした札幌大通西4ビルが開業。2015年7月には六花亭製菓(本社帯広・小田豊社長)が同市中央区北4条西6丁目に10階建てビルの六花亭札幌本店をオープンしている。
そして今回の北菓楼の札幌旗艦店開業。札幌都心部を舞台とした菓子大手同士の商戦の行方は気になるところだ。その一方、これら菓子店の買い物袋を手に下げた大勢の観光客が札幌のあらゆる場所を闊歩する事で、北海道銘菓全体のブランドイメージは更に向上していくことだろう。
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