「原発事故子ども・被災者支援法」でフォーラム

北方ジャーナル

2012年08月26日 15:32


「原発事故子ども・被災者支援法」の概要や意義を説明する大城聡弁護士(左)と江口智子弁護士

 6月21日に成立し、同月27日に公布・施行された「原発事故子ども・被災者支援法」(東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律)について学び、意見を交わそう──。

 8月25日、道内への避難者の自助組織「みちのく会」(本間紀伊子会長)が主催する市民フォーラムが、札幌市中央区の市民活動プラザ星園で開かれた。

 講師として招かれたのは、同法の成立を支えた「SAFLAN」(福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク)の事務局長である大城聡氏(東京千代田法律事務所)と、事務局次長である江口智子氏(響法律事務所)。会場には道内避難者や支援団体関係者、学生ら約40名が足を運んだ。

道内への避難者や支援団体の関係者、学生ら約40名が熱心に聴き入った

 支援法は、本道選出の荒井聰衆議と徳永エリ参議、紙智子参議を含む超党派国会議員13名の共同提案により、議員立法として成立したもの。学習会では、そこに至る経緯とともに同法が「避難の権利」を国の責任において正面から認めたことや、低線量被曝のリスクを前提に地域ではなく個人を対象とした「健康被害の未然防止」が盛り込まれたことなど、両弁護士から同法の概要や特長が説明された。

 一方で両弁護士は、支援法は国の責任による支援を抽象的に明示したもので、具体的な施策は盛り込まれていない「理念法」であることに言及。基本方針を策定する復興庁に必要な支援事業を盛ってもらうべく声を上げ続けなければ、施策が実施されないまま終わってしまう可能性もあると指摘した。

 大城弁護士は「支援対象地域」(法第8条)の策定を喫緊の課題に挙げ、線引きにより地域の分断を招くこともあるため、現実に合わせ柔軟に対応すべきとした。また、来年度予算に必要な施策を組み込むためには、自治体の担当者などを巻き込んで被災者の意見を聴き、それを反映した施策を年内にまとめなければならないと述べた。

 学習会後の意見交換会では、支援対象地域の策定に関し「福島全域は当然のことだが、福島だけの法律になってしまっては」(茨城県から避難した男性)との意見が出たほか、放射線量の安全基準や空間線量の測定方法に疑問を呈する声も相次いだ。


勉強会の内容を総括し、「SAFLAN」や支援団体など個々の役割をボードに整理した上で意見交換会が行なわれた

 被災者の具体的な意見をどう集約し、支援法に反映させていくか──。難しい課題が提示されフォーラムは閉会した。支援法の成立後、これまで5回ほど勉強会などで同法について説明してきたという大城弁護士は、

「本来は政府が広報するような画期的な法律ですが、マスメディアもほとんど報じて来なかったので(支援法が被災者に)浸透していません。法律について伝える機会を与えていただければ、今回のようにさまざまな意見が出てくる。被災者の生の声を国につなげることが大事なのですが」

 と語る。支援法の条文や概要は「SAFLAN」のホームページでも閲覧できる。被災者ならずとも、一度は目を通しておきたいものだ。(ひ)
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