北方ジャーナル2月号の誌面から 巻頭言「メディアの驕り」
今月の巻頭漫画「親中三兄弟ラーメン 不味そう…」(画:石川寿彦)
現在発売されている北方ジャーナル2月号の巻頭言で、私は「メディアの驕り」と題し、次のように書いた。 (く)
メディアの驕り
98歳で亡くなるまで読売新聞グループ本社代表取締役主筆の肩書きを持っていた渡邉恒雄氏に関する評伝に触れて思ったのは、「ひとつの時代が終わった」ということだ。
かつて世界最大とも言われた1千万部という部数を背景に「政界も法律も読売が書いた通りになる」と豪語していたという渡邉氏。その真偽は確かめるべくもないが、戦後のマスコミ界に君臨し、プロ野球や角界への関与を含めて大きな影響力を行使していたことに疑いの余地はない。
だがどうだ。ネット社会の進展とともに彼の権力の拠り所だった新聞テレビは衰退し、今では「オールドメディア」と称され、時に報道のあり方をめぐって「マスゴミ」とさえ言われる始末だ。
私はこのような状況の原因のひとつにメディア自身の驕りを感じ取る。事実に寄り添うというより、渡邉氏ではないが自らが事実をつくりあげていく傲慢さだ。この傲慢さが時に捏造や誤報を生み、情報への多様なアクセスを獲得した読者から見放されることにつながってきたのではないか。
伝えることを生業にする者にとって、何をおいても謙虚になるべきは事実だ。衰退したのはネットのせいばかりではない──。
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