北方ジャーナル2018年11月号

北方ジャーナル

2018年10月15日 00:00




10月15日発売。お求めは道内有名書店、セイコーマート、インターネットではAmazon、またはオンライン書店『Fujisan.co.jp』、あるいは直接当社(右サイドバーのメールボタンから)までお問い合わせください。

【報道】紋別漁協検証──市議選で公選法違反の疑いをかけられた飯田弘明組合長

権威を振りかざす“浜のボス”
議長の座を狙い業者に不当な圧力か



本誌が昨年から今年にかけて“名ばかり組合員”の件を報じてきた紋別漁業協同組合で新たな問題が噴き出した。この春、阿部滋氏から組合長のバトンを受けた飯田弘明氏(67)が今夏の市議選にからんで漁協の取引業者に不当な圧力をかけ、道警の捜査対象となっていたというのだ。紋別の浜でいったい何が起きていたのか──。(本誌編集長・工藤年泰)

----------------------------------------------------------------------

【報道】道警不祥事から考える〈28〉

道警、なおも「全件公表」拒否
轢き逃げ巡査長、認否に矛盾
わいせつ巡査部長は初公判へ



本誌9月号で報告した現職警察官による重傷轢き逃げ事件。初公判で被告人質問に臨んだ元巡査長は起訴事実を認めつつ、同時に「事故に気づかなかった」とも主張、法廷を混乱させることになる。一方、同時期に開かれた北海道議会では、職員の懲戒処分が未だ全件公表に到っていない事実を質された道警本部長が、今後も一部非公表を貫くと答弁する一幕が。前号で報告した公然わいせつ事件の初公判を前に、地元警察の不祥事を巡る最新情報をお届けする。(小笠原 淳)

----------------------------------------------------------------------

【報道】優生思想の罪、法廷へ3

「誤った法が人生狂わせた」
優生保護法訴訟、札幌で初弁論
手術強制・小島さんが意見陳述



国は責任を認め、きちんと謝罪して貰いたい――。本誌7月号で報告した旧優生保護法に基づく不妊手術強制問題で9月下旬、手術の被害者が国を訴えた裁判の初弁論があり、札幌の原告男性が意見陳述に臨んだ。被告の国は「救済制度を設ける義務はなかった」と、請求棄却を求めて争う姿勢を見せている。この日のために改修された傍聴席には障碍のある人などが多く足を運び、かつての優生思想が生んだ悲劇と改めて向き合うことになった。(小笠原 淳)

----------------------------------------------------------------------

【報道】医療観察法「入院施設」の行方

「医療観察」理念浸透半ば
北大病院に道内初の入院施設
立地めぐる住民説明会は紛糾



心神喪失状態で重大な罪を犯した人に刑罰を与えず、治療を通じて社会復帰を促すことを目的とした、医療観察制度。当事者が入院処遇を受ける医療機関は全国に33カ所あるが、法施行から12年が過ぎた今も北海道の施設はゼロ。そんな中、国は地元の大学病院に運営を委託する形で札幌市内に新施設を設けることを決めた。だが開設予定地で初めて開かれた住民説明会では、事前の説明不足を指摘する声が噴出することに。空白地帯の解消には、なお課題が残されているといえそうだ。(小笠原 淳)
----------------------------------------------------------------------

【北海道胆振東部地震】復旧へ奮闘した仕事人を追う

その時、我々にできたこと
「知恵を絞り、汗を流し、支えた」



北海道の実りの秋を象徴する一大イベント・さっぽろオータムフェスト。今年初出店した大通公園7丁目会場の店が、9月23日から30日までの営業期間中、行列の絶えない盛況振りを見せた。出店企業は北海道胆振東部地震で甚大な被害を受けた厚真町の名物、「あづまジンギスカン」などを手掛ける市原精肉店。オータム店の責任者を務める尾関太一さんによると地元工場は大きな被害を受けたが、当初から同イベントに供給する予定数量を生産できるまで回復。予想を大幅に上回るイベントでの売れ行きに、「大変ですが、多くのお客様が応援してくれているのを直に感じます」と笑みを見せた──。あの巨大地震から1カ月以上。発生直後からそれぞれの分野で奮闘した仕事人たち、そして彼らを支えた人々の動きを追った。 (髙橋 貴充)

----------------------------------------------------------------------

【北海道胆振東部地震】コープさっぽろの危機管理対策

災害対応に生きた過去の教訓
生活インフラを支えた自前の物流



北海道胆振東部地震から1カ月が過ぎ、小売業の現場はほぼ正常に戻っている。しかし、震度7の激震とその後のブラックアウトは、小売業の弱点を露呈させたのも事実。各社では、震災の検証が進んでおり明るみになった課題への対策も進み始めた。全道に108店舗を展開し、宅配トドックで34万世帯の戸別配送を行なっているコープさっぽろ(本部札幌・大見英明理事長)は、震災の教訓をどう捉えどんな対策を打とうとしているのか。大見理事長に訊いた。(佐久間 康介)

----------------------------------------------------------------------

【経済】札幌都心で前代未聞のホテル建設ラッシュ

観光需要見込み22棟が乱立
震災風評リスクが浮上する中、進む建設


札幌都心部で前代未聞のホテル建設ラッシュが起きている。予定の棟数は、本誌が把握しているだけでも22カ所にものぼる。来年の2019年から20年にかけて、それらが一斉に開業することになる。多くのホテルは国内観光客よりも旺盛なインバウンド需要を見込んでいるが、北海道胆振東部地震で激減したように災害による風評リスクも抱えての建設だ。槌音が響く22カ所の現場を一覧してみたい。(佐久間 康介)

----------------------------------------------------------------------

【連載】検証「泊原発は本当に必要なのか」38

論議呼ぶ「ブラックアウト」
原発再稼働か発電の分散か

問われる北電の人災と情報発信



9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震で北海道全戸の電力供給がストップする「ブラックアウト」という非常事態を招いた北電。この問題と3基の原発が冷温停止中の泊原発とを関連付ける議論が噴出している。「泊原発が動いていたら大規模停電は避けられた」とする主張がなぜ出るのだろうか──。この中で泊原発再稼働に反対する市民団体は、北本連系送電ケーブルの増設や石狩のLNG火発2号機建設の早期着工などを求める動きを強めている。(ジャーナリスト 黒田 伸)

----------------------------------------------------------------------

【ニュース】

■IR誘致に向け活発な動きの苫小牧
足並み揃える市と商工会議所の戦略

 ──胆振東部地震や沖縄での野党勝利も意外な追い風?

■自衛官の母「ジュバで何が」追及
ジャーナリストらの尋問求める

 ──南スーダンPKO違憲訴訟で弁論続く

■地方議会にも押寄せる人材不足
自民小樽支部が市議候補を公募

 ──18年中の小樽移住者なら他地域の住民も対象に


----------------------------------------------------------------------

【難病】難病の小樽市議が闘病記をブログで発信

病床で綴る難病患者へのエール
「お互い共に乗り越えていこう」



今年6月に国の指定難病「尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)」を発症した小樽市議の酒井隆行さん(44、銭函在住)が、闘病生活をブログに綴り静かな共感を呼んでいる。天疱瘡は皮膚や口腔内にびらんや水泡ができる自己免疫疾患。治療法や症状、入院生活のエピソードなど難病との付き合いを通じて得たものを発信している。(武智敦子)

----------------------------------------------------------------------

【経営】北海道経営未来塾で「紳士服のAOKI」青木擴憲会長が講演

自分のビジネスの原点は行商
逆境の時にこそ知恵を絞ろう



北海道から世界に羽ばたくトップを育てようと、3年前から道内の若手企業人を集めてスタートした北海道経営未来塾(塾頭・長内順一元ニトリ特別顧問)。その中で、国内有数の企業経営者が自身の生い立ちやいかに企業を成長させてきたかを語る公開講座「トップセミナー」は、それぞれの人間学が披露されるだけあって毎回注目度が高い。本稿では、さる10月4日に札幌市内のホテルで開催されたトップセミナーをレポート。この日に登場した「紳士服のAOKI」で知られるAOKIホールディングス(本社横浜市)・青木擴憲(あおき・ひろのり)会長(80)の講演要旨を紹介する。

----------------------------------------------------------------------

【連載】戦争遺産をめぐる旅42

敵国の上陸を水際で防ぐために
釧路に造られた陸軍のトーチカ


大楽毛の住宅地に残る防御陣地


国道38号を東進し、釧路市街地に入る手前の大楽毛の住宅地。その一角に、放置されたままの旧陸軍のトーチカ(鉄筋コンクリート製の防御陣地)がある。JR新大楽毛駅から徒歩5分ほど。70年以上もこの場所にあることが信じられないような日常の生活環境の中に、戦争当時の遺構が佇んでいる。釧路は戦時中、日本の東端にあった軍事拠点でもあり、敵国が上陸するのを少しでも食い止める重要な役割を担っていた。一方で市内は空襲で大きな被害を受け、その痕跡や平和を願う公園が身近にある。(ジャーナリスト 黒田 伸)


----------------------------------------------------------------------

【イベント】「第5回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」 11月2日から開催

短編コンペに過去最高2043作品
世界が注目する新千歳アニメ映画祭



アニメーションの持つ芸術性や幅広い表現力を国内外に発信するイベントとして、世界中のクリエイターから関心を集めるようになった「新千歳空港国際アニメーション映画祭」。5周年という節目を迎える今回は、短編アニメーションコンペティションの応募作品数が過去最高を更新。86の国と地域から2043作品が集まった。そのコンペでは今回から「学生コンペティション」を新設。そして短編のほかに30分以上の作品を対象にした「長編アニメーションコンペティション」も行なわれることが決まった。新旧の人気作や話題作の上映にこの映画祭でしか見ることのできないゲストトークイベントなどプログラムも目白押し。今回も大きな盛り上がりが期待できそうだ。

----------------------------------------------------------------------

【流通】組合員同士を“つなぐ”コープさっぽろの取り組み

南区川沿「Socia店」の大規模リニューアルで
みんなが弾ける「Daredemo Piano」を設置



複合商業施設のエントランスに置かれたピアノを、買い物客が思い思いに奏でていく。軽やかな旋律が広がる日常シーンを天窓から注ぎ込む太陽光が温かく包む──。買い物に来る組合員同士を「つなぐ」機会を創ろうと、コープさっぽろ(本部札幌・大見英明理事長)が札幌市南区の「Socia(ソシア)店」のリニューアルに合わせて、みんなが弾けるピアノ「Daredemo Piano(だれでもピアノ)」を導入した。リニューアルによってより買い物がしやすくなった同店の魅力をレポートする。

----------------------------------------------------------------------

【教育】フェアトレード活動に取り組む市立札幌大通高校

部活動で教材開発などを展開
国際色豊かな生徒らが推進役



市立札幌大通高校(中央区)の部活動で国際交流に取り組む生徒たちが、公正な取引で発展途上国の人々の経済的・社会的自立を目指す「フェアトレード」に理解を深めてもらおうと、ゲームで学ぶ教材開発を進めている。同校を訪ね取材した生徒たちの取り組みを紹介する。(武智敦子)

----------------------------------------------------------------------

【人】古民家や石蔵の再生活用に取り組む川嶋 王志さん

歴史ある小樽の古民家・石蔵を
写真に収めながら、今の時代と
共存した町並み保存の道を探る



運河保存など町並み保存運動の歴史がある小樽で、古民家や石蔵の再生活用に向けたムーブメントが盛り上がりつつある。そんな活動に取り組むのは、NPO法人「小樽民家再生プロジェクト」と「小樽石蔵再生会」。両団体のメンバーである川嶋王志さん(57)は7年前に小樽にUターンしてから、市内に点在する古い建物をカメラに収め作品をフェイスブックに掲載してきた。「建物がそこにある理由を考えることが大切だ」と語る川嶋さんに、小樽の町並みの魅力や歴史的な建造物を残し活用する意味について聞いた。(聞き手・武智敦子)

----------------------------------------------------------------------

【連載】ルポ 「ひきこもり」38 ──絵はがき・手紙支援の可能性

何気ない言葉に込められた
温かい想いが当事者を癒す

ピアサポーター向け研修会の実践事例から



ひきこもりの社会的孤立を予防するツールのひとつとして、絵はがきや手紙を通じて関係性を築く手法が注目されている。当事者によっては負担が重いと感じる訪問支援(アウトリーチ)よりも、緩やかに他者との接点を持つことができ、交流を通じて適切な支援につながるケースもある。札幌市のNPO法人「レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク」(田中敦理事長)が9月29、30日に市内で開催したピアサポーター向けの研修会から2日目の実践事例を紹介する。 (武智敦子)

----------------------------------------------------------------------

【連載】〝農と食〟北の大地から

「種子法」廃止と北海道農業の行方(その6)
~禍根を残す拙速な道条例づくり~

「その場しのぎ」の担当職員たち
道は種子政策を担う気概と哲学を



種子法の廃止を受けた新たな道条例の議論が道議会などで進行中だが、来年の第1回定例会や高橋はるみ知事の退任に合わせたスケジュールありきの様相を呈している。先月号で紹介した審議会委員などからの異論を受け、道は稲・麦類・大豆の3品目に“主要畑作物”と位置づける4品目を追加する付け焼き刃的な対応に終始。立法事実の積み重ねも不十分であり、今後の法制担当部署による条例審査をクリアできるのか疑問が多い。ここは原点に戻り、「本道の種子政策はかくあるべし」との哲学に基づいて客観的で分かりやすい“物差し”を作り、じっくり議論すべきだ。結論を急ぐ必要はない。「北海道たねの会」の公開質問状をめぐる経緯も併せてレポートする。(ルポライター 滝川 康治)

----------------------------------------------------------------------

【フォトレポート・トピックス】

●各地の「刑務作業品」一堂に 恒例「北海道矯正展」に7800人
●ビールのまちさっぽろを象徴する「オータムビヤフェスト」大盛況
●これまでなかった医療検索サイト「メディカルサーチネット」が始動
●「北海道の実りの秋」を実感するホクレン大収穫祭、16日開催へ
●MLBシーズン最終戦に登場した大谷選手に見た野球少年の輝き
●札幌刑務所恒例「大運動会」 熱戦経て更生への思い新たに
●すすきのラフィラに就労支援施設キャリアエディションが9月開業
●太陽財団・助成事業の募集始まる 今年は助成総額を2200万円に倍増

----------------------------------------------------------------------

【連載コラムなど】
*道北フォトエッセイ
*根掛かり人生
*視点 公共交通をどうする?
*風俗嬢のonとoff
*シネマ
*名画の小部屋
*スポーツ筆刀両断
*北海道⇄台湾フィルムプロジェクト
*時計GUYが行く
*新設企業情報
*人物株価
*古本屋女房の“古本的日常"
*乱の女
*このプラモ凄い‼︎
*デンタルエッセイ

----------------------------------------------------------------------
【今月の表紙】鈴木翁二画
『秋風のようめいジャンクション』
関連記事