北方ジャーナル4月号の誌面から 北海道フォトエッセイ70「下川町のアイスキャンドル」

北方ジャーナル

2022年03月17日 18:20


「にぎわいの広場」のアイスキャンドル

 かつてないほどの雪害に見舞われた北海道にようやく春の兆しが訪れてきている。そんな中で今月号の北海道フォトエッセイで筆者の白井氏は、2月中旬に訪れた道北の下川町で開催されていた「アイスキャンドル・ミュージアム」でのショットを寄せてくれた。シバレル北海道の冬を少しでも豊かに過ごそうという地域の思いが伝わってくる1枚だ。(く)

アイスキャンドルと氷彫刻

 シバレを冬の風物詩にした
 下川町のアイスキャンドル

 名寄市から国道239号を東へ15キロほど走ると下川町市街に入る。ここの「にぎわいの広場」に行くと、並べられた数百個のアイスキャンドルが灯されたところだった。辺りが次第に暗くなるにつれ、蝋燭の灯が氷の器を通してとても柔らかでロマンチックな情緒を醸し出す。

「下川のシバレを冬の風物詩に」を合言葉に昭和62年から始まったイベント「アイスキャンドル・ミュージアム」の開幕だ。たくさんの子供たちが目を輝かせてアイスキャンドルと戯れている。

 下川町といえば、かつては鉱業(金や銀が採れた珊瑠(さんる)鉱山など)で繁栄したこともあった。しかし、この町の柱は、やはり面積の90%を占める森林を源にした林業だろう。ちなみに、この町で採取されたアカエゾマツなどの良質木材は建築だけでなく、ウクレレやギターの響板にも使われているという。森はまさに「音楽の母」でもあるのだ。

 ここは環境に配慮した町としても有名である。「持続可能な地域社会の実現」を掲げ、バイオマスを含む森林資源の活用とそれによるエネルギー自給率の向上などに取り組み、その成果を認められて「環境モデル都市」に指定されている。

 会場を後にした私はふと思い出し、かつて名寄に住んでいた頃に知った五味温泉に寄った。

 まちから6キロほどの所にある一軒宿の鄙びた温泉だが、肌に滑らかな湯の感触が素晴らしい。露天風呂に浸かりつつ湯気を透かして見る冬の森の佇まいは、アイスキャンドルに劣らず、私の心に柔らかな灯をともしてくれた。


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