帝銀事件で獄中死した画家 平沢貞通の企画展を小樽で開催中
平沢の絵があしらわれた企画展のチラシ
戦後まもない1948年に行員ら12人が毒殺された「帝銀事件」で死刑判決を受け、無実を訴えながら95歳で獄中死した小樽ゆかりの画家、平沢貞通(1892─1987)の画業に光を当てる企画展「小樽画壇の礎 平沢貞通」展が10月28日から市立小樽美術館(色内1)で始まった。
数奇な運命を辿った画家の作品に見入る来場者(市立小樽美術館)
東京出身の平沢は札幌と小樽で少年時代を過ごし、庁立小樽中学(現・小樽潮陵高校)4年の時に上京し水彩画の先駆者、大下藤次郎が主宰する「日本水彩画研究所」に入会。1914年には二科展に水彩画「昆布乾すアイヌ」を出品し初入選し、22歳の若さで中央画壇にデビューした。その翌年には後の「小樽洋画研究所」の前身となる「日本水彩画研究所小樽支部」を創設し、風景画家として知られる中村善策など多くの若手を育てた。
平沢はその後「良き洋画を描くために日本画を習いたい」と上京。日本画の大家、横山大観に師事し「大暲」の雅号を受ける。顔料を卵などで溶き描くテンペラ画で頭角を現し、帝展(現在の日展)の無鑑査になるなど、大正から昭和初期の中央画壇で活躍した。
同展は、平沢が小樽に移り住み今年で110年、没後30年の節目の年に当たることから企画された。代表作で同美術館が収蔵する「網子の時」や新たに寄贈された作品、獄中画など初公開作品を含めた11点を紹介。三浦鮮治、舟木忠三郎、中村善策ら同時代の小樽で活躍した画家たちの作品22点を展示する「三浦鮮次と小樽洋画研究所の仲間たち」も同時開催され、当時の小樽画壇を振り返る内容となっている。
鑑賞に訪れた同市在住の男性(66)は「平沢の水彩画は初めて見ましたが、瑞々しいタッチに画家としての才能を感じました」と話していた。
会期は来年3月4日まで。観覧料は一般600円。高校生と市内の高齢者は300円。中学生以下無料。問い合わせは同美術館(☎︎0134-34-0035)へ。
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