「博物館網走監獄」の重要文化財指定に高まる関係者の期待

北方ジャーナル

2015年10月21日 09:50


リピーターも多い「博物館網走監獄」(写真は正門)


網走市内の国定公園、天都山にある観光施設「博物館網走監獄」(同市呼人)。ここに保存・展示されている旧網走監獄の施設群が近く重要文化財に指定されることになった。道東の道産木材を使った建築物の重文指定は初めて。国内外の観光客の入り込みの追い風になると市や関係者の間で期待が高まっている。

重要文化財に指定される旧網走監獄の「庁舎」

重文指定されるのは旧網走監獄のうち、五翼放射状平屋舎房(5方向に伸びる受刑者居室)とその内部の中央見張り所、庁舎、教誨堂。また、旧網走刑務所二見ヶ岡刑務支所は農園を含んだ庁舎や舎房、炊事場など。いずれも2006年に国の登録有形文化財に指定されていた。

「博物館網走監獄」は、公益財団法人網走監獄保存財団が所有運営している。初代理事長は、網走新聞オーナーだった佐藤久氏(故人)。1973年に網走刑務所の全面改築が始まったのを機に、佐藤氏をはじめとする市民有志が明治期に建てられた刑務所施設の保存運動を展開。その結果、1980年に財団が設立され83年に開館した。建物の移築や復元のために財団が9億円の資金を借り入れるに当たり佐藤氏は個人保証をするなど人知れぬ苦労があったという。

刑務所施設を博物館にしようという佐藤氏の発想と行動力がなければ現在の『博物館網走監獄』はなかった。当時、海のものとも山のものとも分からない計画に資金を提供した金融機関の動きも特筆される。40年前に網走経済界の決断と行動が現在の網走の観光発展に繋がっている。

今回の重文指定は3年越しで博物館明治村(愛知県犬山市)や北海道大学名誉教授の角幸博氏(建築史学)の指導を受けるなどして体制を固めてきた。網走監獄保存財団の鈴木雅宣理事長は、「重文指定が目標ではなく本物の博物館として認知されるように運営していきたい。北海道の博物館の先駆者として進化していきたい」と話している。

なお、道東の建築物の重文指定には厚岸町の正行寺本堂があるが、これは新潟県糸魚川市の満長寺本堂から明治期に移築されたもので道産木材を使用しているということでは旧網走監獄が道東初となる。
関連記事