「稚内1億円詐欺事件」民事調停協議は不発

北方ジャーナル

2009年04月09日 15:12


相当数の偽造書類は誰がどのようにして作成したのか?

 生活保護受給者である市内在住の独身女性S女史が、知人のY夫妻らとともに地元経営者や高齢者から総額1億円以上を騙し取った疑いが浮上している稚内の「書類偽造詐欺疑惑」(本誌4月号で詳報)──。昨年から地元を不安に陥れているこの事件の解決が遅々として進んでいない。

 既報のように「被害者の会」では3月5日、稚内簡易裁判所にY夫妻に対する民事調停の申立てを行なっていたが、3月31日に同支部で当事者らへの聴取が実施されるに至っている。
 民事調停は、裁判官のほかに一般市民から選ばれた調停委員2人以上が加わって当事者の言い分を聴き、法律的な評価をもとに歩み寄りを促し解決を図るものだが、関係者によれば、この日、協議のなかでY夫妻が提示した解決案は「毎月10万円の返済」だったとのこと。調停を申立てた際の「被害額」だけでも3千万円を超えており、提示された「月10万円」では完済に25年も要することになる。このため裁判所として調停はできないという結論になったという。

 この開き直りとしか思えないY夫妻の態度に「被害者の会」の怒りは増す一方だが、次の手として損害賠償請求訴訟を起こすにしても、弁護士費用などの新たな支出を迫られることになる。お金が返ってこないうえに新たなコスト負担となれば、まさに泣きっ面に蜂といったところだ。

 夫である70歳のY氏は仕事に就くこともできず以前から年金頼みの暮らしだが、最近伝わってきた話では日中から温泉に出掛け、たまたま居合わせた債権者に頭からお湯をかけられるといったトラブルも起きているもようだ。

 主犯と見られるS女史は2月10日に市立稚内病院から「強制退院」させられた後は、通常の生活を送っているようで、娘を連れて自宅近くのショッピングセンターで買物をしている姿が時々見受けられる。関係者の話では周辺に新たな交際相手の影もちらついているようで、債権者のイライラは増す一方だ。


本格的な捜査が待たれる稚内警察署

 稚内警察署もY氏から事情を訊くなど任意聴取を始めたもようだが目立った動きはなく、このままでは事件解決への道程は遠いと言わざるを得ない。既報のように本件は、役所や銀行などが発行する公的文書を偽造し、それらを道具にして広範囲に詐欺行為が行なわれた可能性が極めて高い事件である。借り入れるためにS女史やY夫妻が提示した高金利に被害者らが目がくらんだ側面はあったにせよ、その手口や謎のままの背景なども含めて「民間における借金トラブル」とは一線を画したものであることは容易に想像がつく。


 最北のマチ──稚内では、この事件のほか最近になってメディアを騒がしている幼児虐待殺人も起き、あまりいい印象がない。警察筋からは「捜査するにしても人出が足りない」との話も伝わってくるが、市民の不安を一日も早く晴らしてもらいたいものだ。(石井栄三+本誌編集部)

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