歴史に清算される「二人三脚」

北方ジャーナル

2009年01月18日 01:55


かつての盟友国にイラク戦争を否定されたブッシュ大統領

 メディアは世界に、歴代最低の支持率の中で政権を去るブッシュ大統領が1月16日の最後の会見で、弱気ともとれる発言を漏らしながらも自身の対テロ政策を自画自賛したと伝えた。

 だが「時すでに遅し」。去りゆくブッシュに止めを刺してしまったのが、この前日に、イギリスのデイヴィッド・ミリバンド外相が、15日付のガーディアン紙に「テロ戦争は間違いだった」というコメントを発表したことだ。
 ミリバンド外相は、
「世界各地で様々な事情により発生しているテロをすべて『過激派』と決めつけ、それを攻撃する側は『正義』であるという2者対立の構図を作って戦争を繰り返してきたことは間違いだった」としたうえで、
「こうした欧米の攻撃によって、それまでは無関係だった敵対グループが対抗策として手を組み、さらに巨大化してしまった。テロに対しての軍事的な攻撃は問題の解決にはつながらなかった」と、明確に過去の政策を間違いだったと認めた。

 当時、ブレア首相がブッシュ大統領と二人三脚で戦争を推し進めていた事実を思えば、今さら何をか言わんやだ。が、見方を変えれば、そのタイミングといい、大胆に(身勝手に)過去を精算し自らのスタンスの変更を世界に印象づけたと言えなくもない。

 今回のミリバンド外相のコメントは、自国の行為のみならず、ブッシュの外交政策を根底から否定するものだ。最後の最後で、重要なパートナーであるイギリスの閣僚からも政策の失敗を指摘されたブッシュ大統領の姿は、まさに「裸の王様」を彷彿とさせる。

 また我が国の小泉純一郎元首相もアメリカの対テロ政策に追従し、莫大な予算や自衛隊派遣などで協力してきたことは周知の通りだ。イラク戦争の開戦前夜、国連や国際社会の自重を求める声を無視して火ぶたを切ろうとするアメリカ。進軍ラッパを吹くブッシュを諸手を上げて支持し、詭弁をろうして国会で声を張り上げていた小泉元首相の姿を、私はいまだに鮮明に覚えている。

 そして小泉に追随した安倍晋三元首相も、「テロとの戦い」という言葉を繰り返してアメリカの戦争に加担し続けた。我が国における彼らの責任は全く問われていないに等しい。

 いわゆる小泉政権を端緒とする「国家の暴走」はさまざまにあるが、人命にかかわった「戦争加担」という点で、小泉・安倍の責任は今後、歴史的に断罪されていかざるを得ないのではないか。

 熱狂のようにマスコミと大衆に迎えられたハンサム首相が、彼らのバッシングの熱狂にさらされる──。そんな日が我が国にも来そうな気配だ。

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