さらば私の青春(2)

北方ジャーナル

2008年07月18日 18:17

 ずいぶん久しぶりですが、後編です。
(>前編はこちらから)

 ピンサロ街の懐かしい思い出を振り返りながら、昼間の北24条を歩いた。老舗である“団地妻”は以前、この界隈でも真っ先に摘発された。今はリニューアルされたビルに大きな看板が出ているがはたして(飲み屋ではなくピンサロとして)営業しているのだろうか。筆者は自他ともに認める“ニーヨンフリーク”だが、実はこの団地妻には行ったことがない。なんとなく、最後の最後までとっておきたいなぁというお店だったからだ。このビルの中にはもう一店舗あるようだが、これもピンサロだろうか? 検証が必要だが、なにぶんおサイフが心もとない(料金はそんなに高くないんだけど)。この記事のアクセス数がやたらと上がったら編集長に経費で申請してみよう。でも、ちょっと待てよ。行ってみて「まだピンサロはありました!」ってなことを書いたらすぐに摘発されちゃうだろうから、結局のところ何も書けないな…。知る権利に応えるって難しいなぁ~(笑)。
 ところで、ピンサロではおしぼりで拭くか、バケツでチャパチャパと洗うだけで嬢はサービスを始めなければいけません。そんなのは汚くて可哀想だから、筆者は必ず風呂に入ってから出陣していたもんです。ついでですが、不衛生な環境で性感染症のリスクがあるにもかかわらずピンサロ嬢の報酬は他の風俗業よりも格段に安い。他の業態では1人の客あたり5000円から1万5000円くらいの報酬が相場だと思いますが、ピンサロの場合は客が払う料金が昼間で3500円程度。その半分を報酬として受け取っても1750円っすよ…。しかも、勤務時間中はほとんど休憩がなく、口やら手を使う過酷な肉体労働で、さらには風営法違反や公然猥褻による摘発を受けるリスクまである。

 それでもピンサロ嬢たちが働くのはなぜなのか。そんな問いに口を閉ざす嬢は多かったが、年増の嬢は案外と答えてくれたものだった。働く理由は嬢によってさまざまで、収入の質でピンサロを選ぶ嬢もいる。多くの風俗店では歩合制の報酬が一般的で、人気のない店ではほとんど稼ぐことができないケースも多い。その点、ピンサロは時給プラス歩合給で収入は安定しているといえる。太めであったり、オバサンでも定期収入を得られるというわけで、ニーヨンには地雷が多いと言われた所以である。また、客と会話するのが苦手という嬢もいる。風俗店はほとんどが個室だが、ピンサロはひとつの大部屋をカーテンでしきったり、ときにはカーテンさえない場合がある。時間も短いのでさっさとサービスを始めなければいけないので会話ばかりしてられないのだ。筆者がピンサロ嬢との会話からそれなりに多くの情報を集められたのは、恥ずかしながら下半身がちょいと“せっかち”であるという身体的特性を持っていたからだ。ススキノのヘルス店を転々とし、ついには働くところがなくてニーヨンに来たという者もいた。

 いずれにせよ、ピンサロで働く女性のほとんどがススキノの基準から外れていた。ススキノの風俗は少し洗練されつつあり、画一的な女性、サービスしか提供されていないのではないかと疑問に感じることがあったが、その点では北24条は懐が深かった。ときに深すぎることがあって、背中にびっしり入れ墨した嬢や、あまりの体重にこちらが窒息しそうになる殺傷力に富んだ嬢など、後で笑い話にできるような出来事がたくさんあったし、30~40代女性が多いことも年増好みの筆者に合っていた。

 さて、久しぶりに北24条界隈をぶらついていた私は何度か世話になった杉森ビルに行ってみた。このビルのテナント看板に老舗の「ピンクパンサー」は無くなっていたが、「禁妻」などの看板は残っている。もしやまだ営業しているのでは…と思って、ビルの中に入ってみたが、やはりどの階もシャッターが下りていた。続いて向かったのはバロスビル。こちらはいろいろなテナントが入っているようだったが、いずれも見たことがない店ばかり。そして隣の大一ビルはほとんどテナントが入っていないが、3つほど店を構えているようだった。この大一ビルには思い入れがある。たしか3階に入っていたと思うけれど、私は「ニーハオ」とその隣にある「クイーンメリー」の常連だった。いつもなぜかボディソープの匂いがするエレベーターに乗り、3階に着いてから「今日はどっちにしようか」と迷ったものだ。両店の思い出話と今の大一ビルの状況については、また機会があったら書いてみましょうか。その頃にはサミットのほとぼりが冷めて、再びニーヨンが活気を取り戻していればいいですなぁ。
(ぺ)