2022年08月23日
2022年9月号の誌面から 北海道フォトエッセイ75「北海道最小の自治体 音威子府村の魅力」より
「北海道命名之地」の木碑(©️白井暢明)
昨年とは打って変わり比較的過ごしやすかった今夏だが、そんな中で今回の北海道フォトエッセイの筆者、白井暢明氏が7月中旬に足を運んだのが道北のまち、音威子府村だった。人口700人足らずの北海道で最も小さな自治体で、白井氏はどこにもない大きな魅力を見つけた模様だ。ファインダーの先にあったのは──。
おといねっぷ美術工芸高等学校(©️白井暢明)
北海道最小の自治体
音威子府村の魅力
「オトイネップ」、なんと魅力的な響き…。「サッポロ」もそうだが、私はアイヌ語特有のこの促音地名が大好きだ。この村の人口は700人弱、道内で最小の自治体である。しかし、この村の魅力度は道内でもトップクラスだと私は思う。
街から数キロ北には手塩川河畔に「北海道命名之地」の木碑が立っている。安政期に蝦夷地を探索した松浦武四郎がここでアイヌの長老と会い、彼らがこの地を「加伊(カイ)」と呼んでいることを知り、後に蝦夷地の命名案のひとつとして提案した「北加伊道」の「加伊」が「海」に変わって「北海道」になったという。単に言葉上のこととはいえ、ここが北海道の原点であることには違いない。
街の中には「おといねっぷ美術工芸高等学校」のお洒落な建物がある。この学校には全国からの学生が集まっているという。またそのすぐ近くにある「音威子府小中学校」の建物も、生徒数25名とはとても信じられないほど豪華で芸術的だ。
この村がこのような工芸の町になったのは、かつて村はずれの筬島にあった小学校跡に有名なアイヌ彫刻家砂澤ビッキのアトリエがあったからだ。
40年ほど前に数人の友人と共にこのアトリエを訪れ、ビッキと一夜飲み明かしたことがある。その作品と同様、豪放さと繊細さが同居したビッキが北海道のヒト(アイヌも和人も)と大地・自然をこよなく愛している姿に感銘を受けた。特に彼の次の言葉は私の脳裏に鮮明に焼き付いている。
「オレが産みだした作品もまた、この大地・自然の一部なんだ」
Posted by 北方ジャーナル at 17:37│Comments(0)
│編集長日記
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