2016年06月11日
課題も鮮明になった「空港民営化」フォーラム
道新主催「動き出した空港民営化」フォーラム(6月10日午後、道新ホールで)
北海道新聞社(本社札幌、広瀬兼三社長)は6月10日、札幌市中央区の道新ホールで「動き出した空港民営化」と題したフォーラムを開催。パネリストに国交省の宮澤康一航空ネットワーク企画課長、北海道経済同友会の横内龍三代表幹事(北洋銀会長)、LCCバニラ・エアの石井知祥会長、蝦名大也釧路市長と、今後空港民営化を巡る議論に直接携わっていく当事者4人が参集した。その4人の言葉から、空港民営化の動きに関する様々な課題が浮き彫りになった。
国交省の宮澤康一航空ネットワーク企画課長
広域観光の実現が空港民営化の究極の目的と主張した宮澤氏。
「これまでは、“私たちの空港”という意識が欠如していた」
と厳しく指摘した上で、民営化により関連事業者や自治体などが連携して効率化の取り組みを進め、それによる就航数の増加で“私たちの空港”という意識付けをしていくことが重要と主張した。
北海道経済同友会の横内龍三代表幹事
横内氏は、
「複数の空港を束ねた民営化は、多数の事業体が複雑に関わってくるため、その統制に相当な労力がかかりそうだ。新千歳空港一カ所だけを見ても、滑走路などの運営は国、グランドサービスは航空会社など3社、空港ビルディングは北海道空港、駐車場は独立した別会社といったように複数の事業者が関わっている。関空・伊丹・神戸の関西3空港に倣えという意見もあるが、あちらの場合は、それぞれの役割がしっかり明確化している」
と懸念を示し、
「新千歳で対応できない需要を他の空港に回す、という意見がよく語られるが、他の空港に新千歳の代替となる現実的な需要が無ければ、そこに飛行機は飛んでいかない。その現実的な需要をどう喚起していくかが最も重要なのだ。空港民営化は、北海道全体で魅力ある観光地づくりを進めるオール北海道での観光誘致政策と並行して行なわなければ、最大限の効果は発揮できない」
と強く語った。
バニラ・エアの石井知祥会長
石井氏は
「日本の国内線において、LCCの伸びしろはまだある」
とした上で、
「日本のLCCに対する制度はまだ十分に整備されていない。(だから)我々は需要のあるところへ参入しているというのが現実だ」
と話した。
「空港民営化による効率化やサービス向上は、航空会社や自治体などが一緒になって取り組むことが大事だ」
蝦名大也釧路市長
蝦名氏は下記の具体例で、バンドリング(複数の空港を束ねた民営化)の可能性を提示した。
「我々は、“東北海道”の枠組みで、私の地元釧路と帯広、女満別の空港が連携した取り組みを進めている。具体的には、釧路空港に降り立った観光客が宿泊地を帯広(地域)の十勝川温泉にしたり、その逆で帯広空港に降りた観光客が釧路(地域)の阿寒湖温泉に泊まるといったように。空港は入り口に過ぎない。その空港から入ってきた観光客の需要を、いかに広範囲の地域に広げていけるかという取り組みが重要だ。こうした考え方で新千歳以外の道内空港を活用していくべきだろう」
空港民営化を巡っては、これからも多くの場で議論していく必要がありそうだ。
タグ :空港民営化
Posted by 北方ジャーナル at 02:02│Comments(0)
│政治経済
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