2010年05月21日
撮影禁止? なんでなんで?
勝手に写真を撮ってはいかんと言っているお役所は司法府の裁判所ぐらいかと思っていたら、そうではなかった。一般行政の役所も、知らないうちに撮影禁止になっていたのである。この商売を始めてもう10年ぐらいになるが、今まで知らなかったとは不覚。しかし、なんで撮っちゃいかんのか。
裁判所については、昨年7月号に札幌地裁の廷内を撮影した1枚を載せ、総務課から口頭(電話)で抗議をいただいた。「記者席」の写真を撮らせて欲しいと頼んだら、撮ってはいかんとの回答があったので、ならば勝手に撮るしかありますまいと判断し、そうしたのである。公開が原則の法廷では、誰でも廷内の様子を肉眼で見ることができる。しかし、記録して公開するのはいかんのである。よくわからないのである。ちなみに、東京地裁の内部を撮った時には別に何も言われなかった(時期は内緒)。抗議するのがめんどくさかったのかもしれない。撮ってる最中、地元の司法クラブ員と思しい女性記者が私の背後で「ブーーー」と発声、文字通りのブーイングを受けることになったけれど。さすがエリート記者嬢、取材相手の司法府と一心同体なのだな。
で、今春。一般行政の建物は裁判所とは違うだろう、自由に出入りできて自由に記録できるだろう、公務中のコームインの皆さんに肖像権があるとは思えないし、ゼーキンでつくった国有財産の内部を公開しない理由はないし、と思っていたら、違った。
札幌市内に3つある合同庁舎と札幌管区気象台の庁舎に、この春「セキュリティゲート」というのができた。建物の出入口に、地下鉄やJRの自動改札機のような関門が設けられたのである。霞が関・永田町の中央省庁がそういうことになっているのを見た時には仰天したが(お蔭でアポなしでの取材ができず、内線電話での立ち話になったりした)、わが北海道・札幌にはそんな無粋なキカイなぞ登場しないだろうと思っていた。ところが、あれれ、気づくとキカイは海を越えてやって来ちまったのである。地元の役所に自由に入れなくなっちまったのである。そのうち北海道庁とか札幌市役所とか市内各区役所とかもそうなるのかね、高いカネかけて。
札幌第1合同庁舎(庁舎管理:北海道財務局)のゲート稼働は4月12日から。費用は2961万円で、業者は三菱電機。第2合同庁舎(庁舎管理:札幌国税局)のゲートは、ちょっと早めの4月1日スタート。1474万6200円でNTTファネットシステムズという業者がつくってます。第3合同庁舎(庁舎管理:札幌高等検察庁)では5月1日からゲート稼働。費用は算出できません。なぜなら法務省が全国6カ所ぶんを一括購入したから(札幌、仙台、名古屋、大阪、高松、福岡)。6点セットで合計6932万3100円、業者はNTTコミュニケーションズです。NTTの関連会社って、ゲートつくる業者だけでも2つあるんですね。と思ったら2つどころじゃなく、ほかにもNTTデータカスタマサービスという会社が第1合同庁舎の入札に参加したりしてました。札幌管区気象台のゲート稼働は、ほかより1カ月以上早い3月1日から。これも札幌単独の費用はわかりません。気象庁の一括購入で(札幌、仙台、本庁)、3点合計4620万円也。業者は、おお、これまたNTTコミュニケーションズでした。
設置目的はいずれも「セキュリティの強化」(大意)。ほう。で、セキュリティを強化しなきゃいけない理由は? 殺人とか強盗とかの凶悪犯罪、とくに増えてないよね?(警察白書など参照) ある役所では元厚生官僚が殺された事件(2008年11月)を引き合いに出して説明してくれました。事件翌月の副大臣会議で「政府関係者等への攻撃等に対する危機管理体制について」という7項目の申し合わせなるものがあって、そのひとつとして国の主要な庁舎にゲートをつくりましょうってことになったんだって。ほほう。なんかずいぶんオーゲサだけど、ほんとなの? 「そういう申し合わせがあったのですか」「あったのです」(内閣官房副長官補室)。あら、ほんと。でも、あれって要はOBが自宅で殺されたんでしょ。札幌市内の合同庁舎で最近そんな事件あったっけ(ありません)。
ま、そういうギモンはギモンとして、取り敢えずセキュリティゲートがどういう代物なのかを撮影・公開させていただこうかしら。という段になって、「撮影禁止」の話が出てきたのである。すんなり「どうぞお撮りください」と言ってくれたのは札幌管区気象台のみ(下の写真)。なんと、市内3カ所の合同庁舎は、3カ所とも原則として庁内の撮影を禁じているのであった。「なんでなんで?」と問えば、「防犯上の都合」とか「来庁者のプライバシー確保」とかの回答(大意)。防犯? プライバシー?
なるほど。第1合同庁舎には法務局の窓口が、第2には税務署が入居していて、いかにも不特定多数の皆さんが多く足を運びそうだ。第3に入居する検察庁にはどのくらいの訪問者があるのかよくわからないが、まあ当然、職員以外の人たちもお越しにはなるだろう。しかしこれ、都道府県庁や市区役所、町村役場だって同じこと。もっと言えば、そのへんの路上だって同じこと。無数のプライバシーが飛び交う公道、これ撮影禁止にしたら、カメラ抱えた観光客の皆さんを札幌に呼べなくなっちゃうよ。
というわけで合同庁舎も撮っていいスか。やっぱり駄目? じゃあ、人が写り込まないように撮りますから。人が写らなくても駄目? な、なんで? 1カ所からは「逆になぜ撮影しなくてはいけないのですか」と問い返され、「逆の逆になぜ隠さなくてはならないのですか」と“問い返し返し”をやるようなことになったりして、きりがないので「ふむーん」などと意味不明の感歎詞を放つことになるのであった。
あれこれ言ったり言わなかったりしていたら、「ゲートだけなら…」と撮影を認めてくれた庁舎がありました。最後まで認めてくれなかった庁舎もありました。しょうがないので、認めてくれた庁舎のゲートだけを掲載してみます。認めてくれなかった所でこっそり撮っちゃったかどうかは、ここでは言いません。
というか、こういう類の写真を撮影・公開したとして、いったいどんな「防犯上の」あるいは「プライバシーの」問題が発生するんでしょうか。公式サイトで現物の写真を公開してる省庁もあるんですけどねー。建物の案内図とかもけっこう公開されてますよねー。ふむーん。
ちなみに、この3月、小樽市内に新しくできた小樽地方合同庁舎(第一管区海上保安本部など入居)には、無粋なゲートは設けられてませんでした。1階奥に食堂があり、職員でもなんでもないふつうのおばさんとかが食事目的でふらりと入庁するという、なかなかのどかな光景が展開されてましたとさ。 (ん)
で、今春。一般行政の建物は裁判所とは違うだろう、自由に出入りできて自由に記録できるだろう、公務中のコームインの皆さんに肖像権があるとは思えないし、ゼーキンでつくった国有財産の内部を公開しない理由はないし、と思っていたら、違った。
札幌市内に3つある合同庁舎と札幌管区気象台の庁舎に、この春「セキュリティゲート」というのができた。建物の出入口に、地下鉄やJRの自動改札機のような関門が設けられたのである。霞が関・永田町の中央省庁がそういうことになっているのを見た時には仰天したが(お蔭でアポなしでの取材ができず、内線電話での立ち話になったりした)、わが北海道・札幌にはそんな無粋なキカイなぞ登場しないだろうと思っていた。ところが、あれれ、気づくとキカイは海を越えてやって来ちまったのである。地元の役所に自由に入れなくなっちまったのである。そのうち北海道庁とか札幌市役所とか市内各区役所とかもそうなるのかね、高いカネかけて。
札幌第1合同庁舎(庁舎管理:北海道財務局)のゲート稼働は4月12日から。費用は2961万円で、業者は三菱電機。第2合同庁舎(庁舎管理:札幌国税局)のゲートは、ちょっと早めの4月1日スタート。1474万6200円でNTTファネットシステムズという業者がつくってます。第3合同庁舎(庁舎管理:札幌高等検察庁)では5月1日からゲート稼働。費用は算出できません。なぜなら法務省が全国6カ所ぶんを一括購入したから(札幌、仙台、名古屋、大阪、高松、福岡)。6点セットで合計6932万3100円、業者はNTTコミュニケーションズです。NTTの関連会社って、ゲートつくる業者だけでも2つあるんですね。と思ったら2つどころじゃなく、ほかにもNTTデータカスタマサービスという会社が第1合同庁舎の入札に参加したりしてました。札幌管区気象台のゲート稼働は、ほかより1カ月以上早い3月1日から。これも札幌単独の費用はわかりません。気象庁の一括購入で(札幌、仙台、本庁)、3点合計4620万円也。業者は、おお、これまたNTTコミュニケーションズでした。
設置目的はいずれも「セキュリティの強化」(大意)。ほう。で、セキュリティを強化しなきゃいけない理由は? 殺人とか強盗とかの凶悪犯罪、とくに増えてないよね?(警察白書など参照) ある役所では元厚生官僚が殺された事件(2008年11月)を引き合いに出して説明してくれました。事件翌月の副大臣会議で「政府関係者等への攻撃等に対する危機管理体制について」という7項目の申し合わせなるものがあって、そのひとつとして国の主要な庁舎にゲートをつくりましょうってことになったんだって。ほほう。なんかずいぶんオーゲサだけど、ほんとなの? 「そういう申し合わせがあったのですか」「あったのです」(内閣官房副長官補室)。あら、ほんと。でも、あれって要はOBが自宅で殺されたんでしょ。札幌市内の合同庁舎で最近そんな事件あったっけ(ありません)。
ま、そういうギモンはギモンとして、取り敢えずセキュリティゲートがどういう代物なのかを撮影・公開させていただこうかしら。という段になって、「撮影禁止」の話が出てきたのである。すんなり「どうぞお撮りください」と言ってくれたのは札幌管区気象台のみ(下の写真)。なんと、市内3カ所の合同庁舎は、3カ所とも原則として庁内の撮影を禁じているのであった。「なんでなんで?」と問えば、「防犯上の都合」とか「来庁者のプライバシー確保」とかの回答(大意)。防犯? プライバシー?
なるほど。第1合同庁舎には法務局の窓口が、第2には税務署が入居していて、いかにも不特定多数の皆さんが多く足を運びそうだ。第3に入居する検察庁にはどのくらいの訪問者があるのかよくわからないが、まあ当然、職員以外の人たちもお越しにはなるだろう。しかしこれ、都道府県庁や市区役所、町村役場だって同じこと。もっと言えば、そのへんの路上だって同じこと。無数のプライバシーが飛び交う公道、これ撮影禁止にしたら、カメラ抱えた観光客の皆さんを札幌に呼べなくなっちゃうよ。
というわけで合同庁舎も撮っていいスか。やっぱり駄目? じゃあ、人が写り込まないように撮りますから。人が写らなくても駄目? な、なんで? 1カ所からは「逆になぜ撮影しなくてはいけないのですか」と問い返され、「逆の逆になぜ隠さなくてはならないのですか」と“問い返し返し”をやるようなことになったりして、きりがないので「ふむーん」などと意味不明の感歎詞を放つことになるのであった。
あれこれ言ったり言わなかったりしていたら、「ゲートだけなら…」と撮影を認めてくれた庁舎がありました。最後まで認めてくれなかった庁舎もありました。しょうがないので、認めてくれた庁舎のゲートだけを掲載してみます。認めてくれなかった所でこっそり撮っちゃったかどうかは、ここでは言いません。
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北方ジャーナル4月号の誌面から 北海道フォトエッセイ70「下川町のアイスキャンドル」
北方ジャーナル12月号の誌面から 北海道フォトエッセイ「太陽の丘えんがる公園に広がる 虹のひろばコスモス園」
北方ジャーナル12月号の誌面から 連載「公共交通をどうする? 第113回 札幌市営地下鉄50年に想う」
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Posted by 北方ジャーナル at 17:40│Comments(1)
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この記事へのコメント
セキュリティに役に立つのか役に立たないのかもよくわからぬまま金のかかるゲートがどんどん増殖している。気象台の庁舎にこんなものを設置するなんてナンセンス過ぎる。こういうのが議論もないまま広まっていること自体が日本の行政が国民のためでないことの証左ではないだろうかね。
Posted by i hiroshi at 2011年01月15日 02:05
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