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2010年05月20日

検証・北教組違法献金事件

検証・北教組違法献金事件

北海道教職員組合(北教組)が、民主党(道5区)の小林千代美衆院議員(41)陣営に計1600万円もの違法な選挙資金を提供したとする政治資金規正法(第21条=企業・団体献金の禁止)違反事件の初公判が18日および19日に札幌地裁で行なわれた。

18日は「小林ちよみ合同選挙対策委員会」の資金管理統括責任者だった木村美智留被告人(46)に(以下、公判A)、19日は北教組中央執行委員長代理の長田秀樹被告人(50)および団体としての北教組に対するもの(以下、公判B)で、それぞれ起訴事実を全面的に認め、即日結審した。

公判Aは選挙用資金を「依頼した側」、公判Bはそれを「提供した側」が被告人となったわけだが、共通していたのは両被告人とも「違法性の認識はあったが、(小林氏を)勝たせるための確信犯的な行為」だったことだ。

各公判の概要については他のメディア報道をご参照頂くとして、ここでは両公判を通じて見えてきた事件の背景や問題点を探ってみたい。

     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

08年9月20日、小林氏は来るべき総選挙に向けた選対事務所を立ち上げた。これは直後に誕生した麻生内閣が「解散用内閣」と見られ、麻生首相は就任早々にも衆議院を解散し、総選挙が行なわれるはずだというメディア報道を受けての動きだった。しかし、国民の期待(?)とは裏腹に当時の麻生首相は「(解散時期は)私が決める」と決断を先送りし、09年7月21日(解散)までの10ヵ月間も「おあずけ」を食らうことになった。

貯蓄もなく、自身の生活費にも困窮していた小林氏にとって、賃料や人件費など月平均で約150万円もかかる選対事務所を維持するのは至難の業だった。解散説が浮かんでは消えていった事態に伴い、他選挙区陣営はその規模を縮小または一時閉鎖するなどしたが、浪人中だった小林氏にとって事務所の縮小・閉鎖は「命取り」となる行為だった。

北海道5区は、「日(北)教組の天敵」として知られる自民党文教族の町村信孝元官房長官が相手だ。そのため、北教組は「打倒・町村」のため、組織を挙げて対立候補を支援することが通例で、執行部には小林氏を当選させるためならば「手段は選ばない」という空気があったのだろう。度重なる解散説の延期にも事務所を存続させるに至ったのは、こうした北教組側の意向もあった。

検証・北教組違法献金事件
「解散延期」が恨めしかった?木村美智留被告人
(08年7月、北海道自治労会館)


早期解散を見込んでいた小林選対の軍資金はわずか数ヵ月で底をつき、会計責任者の木村被告人は当時の北教組委員長だった故・住友肇氏に相談、住友氏は「北教組の金庫」から現金400万円を提供した。これを機に木村被告人は、解散が遠のく度にこの要請を繰り返し、09年3月と5月にも住友氏から各400万円を受け取っていた。

住友氏が09年6月24日に病気で急死し、長田被告人が「委員長代理」として北教組の事実上のトップとなったが、木村被告人に対する資金提供も「引き継いだ」形となり、09年7月に400万円を手渡した。こうして北教組幹部は4回にわたり計1600万円もの組合費を「小林氏当選」のために使った。

両被告人とも違法性の認識はあったが、北教組にとっても道5区での勝利は至上命令のため、背に腹は代えられないというのもまた共通の認識だった。

政治的中立を求められ(地方公務員法)、生徒に「人の道」を説くはずの教職員団体幹部が、己の政治目的達成のために違法行為に及んだことになり、内外の批判を浴びるのも当然と言える。ところが、北教組は両被告人が逮捕された当時、反省するどころか「不当な組織弾圧」との声明を発表し、他人に厳しく自分に甘い体質をさらけ出した。

     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

現行の政治資金規正法第21条では、「政党」または「政治資金団体」に対する企業・団体献金は認められている。しかし、木村被告人は「個人」として受領したために政治資金収支報告書にも記載せず、犯罪行為となった。「民主党北海道第5区総支部」として受け取っていれば何ら問題はなかったのだが、同支部は小林氏のみならず地元の道議や市議らも所属しているため、小林選対事務所の経費としてもっぱら拠出できないという事情があったと推察できる。

小林氏本人は、一連の資金提供について「知らなかった」と発言し、木村被告人も「自らの判断」としている。しかし、小林氏は自身の経済環境を踏まえ、毎月150万円にもなる事務所維持費の原資がどうなっているのか疑問に思わなかったのだろうか。あるいは小林氏の発言が事実だとして、事務所の経済状態すら把握できない議員が、国の経済状態(予算)をどうチェックできるのか。

検証・北教組違法献金事件
事務所資金の原資は「知らなかった」 小林千代美議員
(09年6月27日、札幌・大通公園)


公判で長田被告人は「(1600万円は)一般会計である『対策費』から仮払金として拠出した」と答えている。しかし、当時の住友氏も長田被告人も、木村被告人に対して領収証はおろか預かり証も要求していない。本当に「仮払い」だったのかは疑問で、木村被告人の「返す必要のない金と認識していた」という証言との整合性はない。

さらに、長田被告人は検事や裁判官の「1600万円の補填はどうするつもりだったのか」「組合員に対してどう報告するつもりだったのか」「(捜査で出てこなかった)直近6年分の帳簿はどこにあるのか」などの質問に対しては「考えていなかった」「知らない」「分からない」「今は言えない」などを繰り返すのみで、傍聴席からは大きなため息と失笑が漏れていた。

両公判での最終弁論で弁護団は、
「本人は反省しており、再犯の可能性はない」
「ズルズルと衆議院解散が延びたのが原因」
「道5区は最重要選挙区だった」
「現行の選挙制度は金がかかる」
「メディアの執拗な取材で社会的制裁を受けた」
「50日間以上も拘留された」
「北教組の政策実現のためだった」
などを列挙して情状酌量を求めたが、その論旨は「外に干してあったから下着を盗んだ。仕方がなかった」と同様で、どこまで裁判官に届くのかは疑問だ。

何にせよ、目的外の用途に組織決定もなく組合費を拠出したという行為は、本来ならば刑法の背任(第247条)や業務上横領(253条)に当たるはずなのだが、札幌地検は政治資金規正法のみで起訴した。そして公判Bの論告求刑では、帳簿の移動などについて「原資解明を逃れるための隠蔽行為」と断じたが、ずさんな経理処理を含めた「北教組マネー」の全容解明には至らないまま幕引きとなりそうだ。

求刑は、公判Aで木村被告人に対し禁固6ヵ月、公判Bで長田被告人に対し禁固4ヵ月および団体としての北教組に対し罰金50万円。判決はそれぞれ6月9日、同14日に言い渡される。

また、小林氏は自身の進退に関し、判決が出揃って今国会が閉会する6月中旬にも決断するという。

     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

民主党がマニフェストで「企業団体献金の廃止」を高らかに謳いながら、その党公認の候補者側がウラ献金を受け取っていたという事実。そして、野党時代の民主党は、自民党議員による金銭犯罪の「秘書がやったこと」という言い訳を痛烈に批判していた。

今、政権党となった民主党の幹部や議員は同じ事をしている。この一件はもちろん、小沢一郎幹事長の「陸山会問題」しかり、鳩山由紀夫首相の「故人献金問題」や「母親からの資金提供(贈与税)問題」しかりだ。保身のために秘書やスタッフに全責任を押しつける体質は自民党と何ら変わらず、党が持っていた「清貧イメージ」は脆くも崩れ去った。

検証・北教組違法献金事件
言うは易し、行なうは難し

改めて言うまでもないが、国会議員は一部勢力の利益のために存在するのではない。票(当選)のために組織の支援を受け、当選すれば政策という形で「恩返し」をする。こんな構図がまかり通っている限り、カネの問題を含めた政治不信はいつまでも消えず、国民は不幸になっていくばかりだ。

また、編集部には全道庁労組OBからの告発文も届いており、その選挙運動の実態が詳細に綴られている。メスを入れなければならないのは北教組に限った話ではなさそうだ。

いつまで日本は「政治三流大国」に甘んじなければならないのか、一人の国民としても絶望感でいっぱいだ。今夜はヤケ酒を飲みたいところだが、明日は健康診断なのでシラフで寝る。 (や)



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Posted by 北方ジャーナル at 16:49│Comments(0)政治経済
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