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2010年05月13日

「国の借金」の欺瞞

「国の借金」の欺瞞

去る10日、財務省が「国の借金総額」を発表した。翌日の日本経済新聞(写真)によると、2009年度末の国債や借入金などを合わせた「国の借金総額」は882兆9,235億円に達し、08年度末から36兆4,265億円増えて過去最大を更新、国民1人あたりの借金は約693万円になったという。

四半期毎に公表されているデータだが、なぜ財務省はこのデータだけをことさら強調し、テレビを含めた多くのメディアは「また借金が増えた!破綻する!」という論調になってしまうのか、いつも不思議でならない。

そもそも、政府が発行する円建て日本国債のほとんどは、国民の預貯金や年金保険料などの「運用先」となっている。つまり、政府に金を貸している「債権者」は他ならぬ国民ということになる。それがなぜ「国民1人あたりの借金」という理屈になってしまうのだろうか。

しかも、国債償還は将来の国民の税負担によると考えたら、「国民が貸した金を国民が返す」という破綻した論理になってしまうのだ。

まず、メディアによる「国の借金」という言葉自体がそもそも意図的だ。

これは「国家」の借金ではなく、国家経済を形成する主要5体の一部でしかない「政府」の借金という意味だ。つまり、国債発行額など「政府の負債」という一部分をフローとして見ただけの話で、決して国家経済全体のストック(バランスシート)では語られていない。

内閣府HPの「平成20年度 国民経済計算」によると、国家全体の金融および非金融の正味資産(国富)は2,783兆円にものぼる。これは世界一の対外純資産国、つまり世界一の「カネ余り大国」とも言える。

一方、長引く不況感のために企業は融資を受けたがらず、個人もせっせと貯めている。その結果、銀行には預金(銀行にとっては負債)がダブついてしまい、運用しきれなくなっている。

資本主義経済下において、企業の資金繰りや設備投資のための「借金」(融資)は決して悪ではなく、資金を循環させ経済成長を促す原動力となるものだ。そういう意味でも国債発行は、銀行の預金額が融資額を上回る「破綻構造」を回避するという意味で一定の役割を果たしており、公共投資によって経済市場に金を循環させるという意味でもメリットは大きく、実質GDPの成長にも好影響を与えるものだ。

要するに、民間が借金しない分だけ政府に偏っているだけの話であり、国家全体の貸借対照表に大きな問題はないはずなのだ。

ただ、民主党政府による2010年度予算編成で計上された44兆円という巨額な国債は、それらを見通した経済政策というわけではなく、根拠なき財源をアテにした総選挙用の政策を具現化するための「苦肉の策」でしかなかった。

しかも、内閣府の調査によると、「子ども手当」受給予定者の約4割以上が現金を「貯蓄に回す」と回答しているようだ。従前から予想できたことで、そもそもが先を見据えた政策ではなかったのだ。

ともあれ、政府の借金だけをピンポイントで取り上げ、「日本は借金で首が回らない」と報じるメディアの論調には違和感を禁じ得ない。いくら借金をしてもなかなか景気が良くならない財政失策(?)の方にメスを入れるべきではないのか。

え?
だったらお前がやれって?
いや、それは無理難題です。

今夜のおかずの予算で悩む「ミクロ経済」専門ですので…。(や)



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Posted by 北方ジャーナル at 23:24│Comments(0)政治経済
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