2009年11月15日
拉致問題「対話で解決を」 蓮池透さん札幌で講演
「北朝鮮が何にこだわり、何に怒っているのかをよく考えるべきです」と、蓮池透さん(15日午後、札幌市北区民センター)
経済制裁では何も進まない、対話こそが問題解決への早道だ―。15日午後、北朝鮮による日本人拉致問題の被害者家族として知られる蓮池透さん(54)が札幌市内で講演し、約280人の市民らに「拉致問題の“真の解決”を」と訴えた。拉致やミサイルなどの問題を利用して北朝鮮の脅威を煽る世論に警鐘を鳴らし、「左右の垣根を超えた闘いが必要」との呼びかけに、参加者らは対話路線の可能性を実感している様子だった。
講演会は全国印刷出版産業労働組合(全印総連)札幌地連(横川雅則委員長)が主催し、北区民センターで開かれた。蓮池さんが札幌で講演するのは、今回が初めて。拉致被害者家族連絡会(家族会)元副代表の蓮池さんは、2006年7月のミサイル発射問題に端を発する経済制裁路線への傾斜に強い違和感と危惧を覚え、北朝鮮の脅威を強調して憎悪を煽るだけでは何も解決しないと考えるに到った。現在は家族会と行動をともにすることはなく、退会勧告が出されているという。講演では、「拉致問題で在日の人たちを責めても意味がないと言ったら、国賊とか売国奴とか言われるんです」と苦笑混じりに報告する一幕もあった。
問題の早期解決を願う蓮池さんは、再調査に関する昨年の日朝合意を「同時行動で形にすべき」と訴える。今年9月の鳩山首相の国連演説に触れ、「首相は『北朝鮮に誠意ある行動があれば日本も』などと、あたかも向こうが先にボールを投げるべきであるかのように言うが、現状は逆。日本が先に意思表示をし、両国同時に行動すべき」と話した。また、核実験やミサイル発射の脅威を拉致問題と一括りにする論調を批判し、「全世界的な問題と日朝間固有の問題とをパッケージで考えるのはおかしい。核が動かないと拉致も動かない、ではなく、それぞれ単独で解決する問題の筈」と指摘、経済制裁にこだわっていては早晩身動きがとれなくなると訴え、「いくら甘いと言われようが、対話路線の模索は必要。にらめっこしているうちに時間だけが過ぎていく。一刻も早く、7年前の日朝平壌宣言を具体的に履行する姿勢を示さなくてはならない」と呼びかけた。講演終了後の質疑応答では、参加者からの「かつて『拉致は存在しない』と公言していた政党や個人から、その後謝罪はあったか」との質問に「むしろ名もない在日の皆さんが何人も『申し訳ない』と言ってきた」と答えるなどのやり取りがあった。
主催した全印総連札幌地連は、「まさしく対話こそが重要。この問題は、左右関係なく早期解決する必要がある。これを機会に、今後も札幌でもっと蓮池さんのお話を聴く機会が増え、冷静な世論が拡がっていくことを願いたい」(川原烈夫書記長)と締め括った。札幌市北区から参加した公務員の男性(48)は、「拉致問題は人権問題。経済制裁はむしろ逆効果にしかならないと実感した。現政権がどこまでやってくれるかはまだわからないが、一日も早い制裁緩和に期待したい」と話していた。
(ん)
Posted by 北方ジャーナル at 19:04│Comments(0)
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