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2009年07月22日

#.9 ヴァン・モリソン「ムーンダンス」

#.9 ヴァン・モリソン「ムーンダンス」
いま蘇る、あのミュージシャン!
懐かしのRock
(フリーライター 七闇夢妖)
第9回 Van Morrison『Moondance』
(※ 北方ジャーナル2005年1月号掲載記事)



孤高のヴォーカリストの“魂”を聴け!


 欧米ではジョン・レノンやボブ・ディランと並ぶ“ロックの巨人”として絶大な評価を得ながら、来日経験がないためか日本では今ひとつマイナー。そういう意味で、ザ・フーと共通項が多い存在といえるのが、“魂のシャウター”ことヴァン・モリソンだ。

 45年に北アイルランドのベルファストで生まれたヴァンは、ビートグループ「ゼム」のヴォーカリストとして64年にデビュー。自作曲「グローリア」などをヒットさせてシンガー&ソングライターとして順風満帆のスタートを切ったかに見えた。だが、バンドのコマーシャリズム路線に反発して67年に脱退。“求道者”“アンチ・ビジネス”という言葉がしっくりくる彼の孤高のキャリアは、ここから始まる。

 ソロとなったヴァンは、「ツイスト&シャウト」の作者としても知られるプロデューサーのバート・バーンズを頼ってアメリカに渡り、すぐにシングル「ブラウン・アイド・ガール」をヒットさせる。ちなみに筆者は、この曲を愛娘のテーマとしているくらい好きだ。

 それはともかく、バーンズの急逝でまたも行き場を失ったヴァンは、68年に初のソロアルバム「アストラル・ウィークス」をリリースする。モダンジャズの一流ミュージシャンを迎えて録音された本作は、商業的には失敗したものの“永遠のクラシックアルバム”として評論家筋からは絶賛を受けた。今でも「名盤50選」などの類では必ず上位に顔を出す名盤で、コマーシャリズムに背を向けてひたすら自己の内面と向き合ったヴァンの乾坤一擲的な作品だ。

 内省的な作品が続くと、レコード会社が嫌がるか――といった配慮をヴァンがするはずもないが、翌69年にリリースされた「ムーンダンス」は前作から一転し、R&Bやブルースといった自身のルーツに立ち返った傑作だ。シングルヒットした「クレイジー・ラヴ」、今でもライヴのハイライトナンバーとなっている「キャラバン」、それに「ストーンド・ミー」「ムーンダンス」と名曲が揃い、ソウルフルな“モリソン節”が堪能できる。

 70年の「ヒズ・バンド・アンド・ザ・ストリート・クワイア」、71年の「テュペロ・ハニー」までの4作はいずれも甲乙付け難い傑作で、どれを紹介するか多いに迷ったが、ここは筆者が愛聴している「イントゥ・ザ・ミスティック」が入っている「ムーンダンス」を選んだ。

 この後もヴァンは、麻薬で入院していた数年を除いてはコンスタントにほぼ年1枚の割で新作をリリースし続けている。宗教への回帰や内省的歌詞で「難解」なイメージを持たれがちだが、ヴァンに関してはとにかく歌と、歌うという行為に込められた“魂”を味わうしかないだろう。

「何か退屈」「結構ワンパターン」といった声も聞くが、実は筆者がヴァンの魅力を再認識したのは30代を超えてからだ。ヴァンといえば「違いの分かる大人の音楽」だが、幅広い世代にアピールできるアルバムとしては、ゼム時代からソロ23作目までのアルバムからチョイスされた「ザ・ベスト・オブ・ヴァン・モリソン」(90年)がオススメかも知れない。多少、選曲基準に疑問を感じる一枚だが、やはり「ブラウン・アイド・ガール」が収録されているのは嬉しいのだ。

 飛行機嫌い、ライヴ嫌い…と、とかくワガママな面がクローズアップされるヴァンだが、自らの音楽観への従順さは特筆に値する。アイドルからチビ・デブ・ハゲのオッサンに変貌しても、ヴァンの歌声は今でも瑞々しい。

※ この記事は、北方ジャーナル2005年1月号に掲載されたものです






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#.9 ヴァン・モリソン「ムーンダンス」
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