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2009年07月16日

#.8 ピンク・フロイド「夜明けの口笛吹き」

#.8 ピンク・フロイド「夜明けの口笛吹き」
いま蘇る、あのミュージシャン!
懐かしのRock

(フリーライター 七闇夢妖)
第8回 Pink Floyd『THE PIPER AT THE GATES OF DAWN』
(※ 北方ジャーナル2004年12月号掲載記事)



奇才が唯一参加した「もうひとつのピンクフロイド」


 70年代前半に大輪の花を咲かせたプログレッシブ・ロック。キング・クリムゾンやEL&P、イエスらがクラシックなどの要素を持ち込み、傑出した演奏力で聴衆を魅了する中でも、アルバムづくりにおけるコンセプトやライヴの演出などでシーンにひと際大きな影響を与え、ミュージシャンのみならず音楽ファンの間でも別格の扱いをされていたのがピンク・フロイドだ。

 65年に結成されたフロイドのオリジナルメンバーは、シド・バレット(g・vo)、ロジャー・ウォータース(b・vo)、リック・ライト(key)、ニック・メイスン(ds)の4人。ロンドンのクラブに出演するようになった彼らは、アッという間にアンダーグラウンドシーンを席巻する。

 この頃、ほとんどの楽曲を書いていたのは“天才・奇人”を絵に描いたようなバレットで、シュールな歌詞と独特の感性を感じさせるサウンドはサイケデリックそのもの。67年に発表されたファーストの「夜明けの口笛吹き」は、そんなバレットの才能の豊かさが窺い知れる傑作だ。

 フォースの「ウマグマ」にライヴバージョンが収録されている「天の支配」で幕を開けるファーストは、後年のスペイシーな「フロイド・サウンド」とは全く趣きの異なる色彩を帯びている。シュールとメルヘン、緻密な計算とインプロビゼーション(即興演奏)が入り乱れた作品群は個々に魅力的で、アルバムとしてもトータル性を感じさせるところが凄い。

 ファーストが収録されたのはアビーロード・スタジオで、ちょうどこの時ビートルズが「サージェント・ペパーズ~」を制作中だったという。のぞきに来たポール・マッカートニーも絶賛したとのことだが、ロンドン屈指の繁華街ピカデリーサーカスの“夜の匂い”をそのまま閉じ込めたようなサウンドは今も新しい。

 ファースト発表後、バレットはドラッグの影響もあって、ツアー中に失踪したりライヴ中に突然呆然と佇んだりと、精神に異常を来して脱退。代わりにデイヴ・ギルモア(g・vo)が加入。ウォータースがリーダーシップをとって再出発し、名盤を量産してモンスター・バンドになっていったことは周知の通りだ。

 5枚目の「原子心母」(70年)や、ビルボード誌の全米ポップチャートにおいて、アルバム部門のトップ100に連続725週(14年!)入り続けた9枚目の「狂気」(73年)が特に有名なフロイドだが、彼らにとって“異色作”であるファーストこそが音楽的な原点だといえる。

 11枚目の「炎/あなたがここにいてほしい」(75年)を引き合いに出すまでもなく、バレットの“精神世界”を探求した結果が、セカンド以降の傑作群だったのではあるまいか。バレットが発狂しなければどうなっていたのか――。そんな想像を巡らしながら、彼らの膨大な作品を聴いていくのも一興かも知れない。

※ この記事は、北方ジャーナル2004年12月号に掲載されたものです










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#.8 ピンク・フロイド「夜明けの口笛吹き」
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