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2009年06月23日

今こそ未来のために育児を見つめ直そう



 今年の「こどもの日」に合わせて総務省が発表した人口推計(4月1日現在)によると、日本の子供(15歳未満)は昨年より11万人少ない1714万人。28年連続の減少、過去最少を記録した。総人口に占める子供の割合も13.4%と世界最低水準。少子化に歯止めがかからない状況が改めて浮き彫りとなっている。

 少子化社会への対応は、国と社会の未来を確たるものにするための喫緊の課題だ。定額給付金と同時に交付された子育て応援特別手当や、妊婦健診の公費負担の拡充、出産一時金の引き上げなど、政府もさまざまな施策を打っているが、好転の兆しはまったく見えてこない。

 現在発売中の『北方ジャーナル7月号』では、この〝日本の少子化〟をテーマに田下昌明氏と語り合った模様を掲載している。旭川で40年以上にわたって子供たちとその家庭環境を見つめ続けている現役の小児科医である田下氏は、全国的に大きな反響を呼んだ『真っ当な日本人の育て方』(新潮社)の著者でもある。今回のインタビューでは田下氏独自の育児論、少子化を克服した諸外国の例から、日本の少子化を食い止めるために何をすべきかを探ったが、田下氏との対談はこれで2回目。前回のインタビューは『〝亡国の育児〟からの脱却』と題して2009年1月号、2月号に分けて掲載している。

 前後篇あわせて24頁。インタビューとしては破格の扱いだが、田下氏との対談はまさに「目からウロコ」の連続だった。その対談からおよそ半年が経過したことでもあるし、本ブログで当時の記事をブログ用に再構成して連載していきたいと思う。育児真っ盛りで悩んでいる人も、育児を卒業した人も、育児に関係のない人にも、田下氏から発せられる言葉に触れてほしい。

◆明治維新と敗戦◆

――私も子を持つ一人の親として、田下さんの『真っ当な日本人の育て方』を読んで、いろいろ考えさせられました。ただ、あの本は単なる育児書ではないと思うんですよ。育児論だけではなく、育児と非常に密接な文化についても語られている。日本人は過去、幾度かその精神風土を大きく変えざるを得なかった、あるいは自ら変わった時期がありましたが、近代でいうとそれは明治維新であり、第二次大戦、つまり敗戦だったと思います。ただし、この明治維新と敗戦はその変わりようが随分と違う。明治維新のときは世界の中で生き残っていくために自主的に日本人が自ら変容しなければならなかった面があったと思うのですが、敗戦時はレイプされたに等しい変貌ぶりがあったと考えているんです。

田下「それは言葉は悪いけど、なかなかうまい表現ですね」

――一時的に占領下に置かれたにしても、それまで日本にあった食文化、芸能、育児、何から何まで捨てなくていいものまで捨ててしまった経緯があると思うんですよ。

田下「それまで外国に占領されたことのない〝無菌民族〟の日本人に敗戦は大きな挫折と屈辱、絶望を与えました。あの戦争は何から何まですべて日本人が悪いのだ、と過剰な反省がなされて、それまでの日本の歴史や文化など、すべてを否定することで自分を正当化しようとしたのです」

――田下さんは小児科医として育児を考えるときに、なぜこうした日本の歴史的経緯や文化を考えるに至ったのですか。

田下「私は昭和12年の生まれですから、敗戦のときは8歳。北大の小児科学教室に入り大学院を修了して、旭川市立病院に来て、それから自分で開業してますが、昭和40年以降ずっと診察室の中で子供と母親の変化を見てきました。そのなかで、どうも我々が育てられてきた方法と違うなと最初は感じたんですね。なんというか、だんだんと親が子と真剣に、本気で対峙しなくなった。本気なのかもしれないけれど、見当違いな方へ顔が向いてしまっているような感覚があったんです。育児で重要なポイントは『世代間伝達』といいまして、一見遺伝のように見えるんですけど、育児というのは本能だけではなくて経験によって成り立っているんです。つまり、基本的に親は自分が育てられたようにしか子を育てられない。そうすると、もし悪いスパイラルにはまったら祖父母から親、親から子へとだんだんと育児力が低下してしまいかねない」

◆育児は本能ではできない◆

――そこで、これはマズイぞと思われたわけですね。

田下「私は子供が4人いるんですが、長男が中学生になった頃というのは、国旗を掲げる、掲げないという話が持ち上がった時期で、『育児というのは日本の文化を担える、伝える人間を育てることではないのか』と疑問に思ったのがきっかけですね。それが今からだいたい35年前。それから無我夢中で母子関係や教育、育児に関する出版物を読み漁りましたね」

――そこで田下さんの著書に現れる動物行動学者のコンラート・ローレンツ(※注)やジョン・ボウルビィ(※注)に出会った。

田下「意図したわけではないんですけど、ローレンツの動物行動学と彼の哲学を先に読み漁っていたんです。ボウルビィのような天才と私は比べ物にはならないけど、ボウルビィが彼の理論に辿るまでの道と同じ道を歩いてきたような気がします。そして、彼の理論を知れば知るほど、どうしてこれほどのものが世に広まっていないのか、それが不思議で仕方なかったんです。そこで、私の小児科医としての実地の経験と合わせてコラムを書いたり、小冊子にしていたら、ある日新潮社の人が来て、今までのものをまとめないかという話になって」

――そんな経緯があって06年に『真っ当な~』が刊行されることになったと。まさに小児科医が育児論を展開するというところに、大きな意味があると思うんです。のべで50万人もの子どもを診てきた田下さんが実例を織り交ぜながら育児、あるいは育児文化を語るというところにこの本を成立させているポイントがあるのではないでしょうか。

田下「育児というのは肉体、精神の両面で取り組むものです。精神的な理由で肉体面の変化が起こることはままありますから、小児科医としては肉体だけではなく精神面も診れなければ困るわけです」

――特に小さな子どもは、むしろ精神面のケアが大事だったりしますよね。

田下「精神と肉体の両面を診るということは、結局は疾患だけではなく育児のあり方や母子関係に目を向けないわけにはいきませんよね。育児について考えてみたときに、まず『みんなどんな目標を立てて育児を始めているんだろう』と私は思ったんです。そして自分なりに育児の目標というものが鮮明に『この3つだな』と思うようになったのは私が40歳くらいの頃だったと思います」

(つづく)

(※注)
コンラート・ローレンツ(1903─1989)
オーストリアの動物行動学者。インプリンティング(刷り込み)の発見者で近代動物行動学を確立した人物として知られる。刷り込み現象の発見は、自らハイイロガンのヒナに母親と間違われたことに端を発したもの。

ジョン・ボウルビィ(1907─1990)
イギリスの医師、精神分析家、さらに母子間の絆研究の開拓者として知られる。第二次大戦後のイタリアで孤児院などに収容された戦災孤児の発達不全、罹患率、死亡率が問題となり、ボウルビィはその調査に携わった。51年、母親による世話と幼児の心的な健康の関連性についての論文を発表。これは親を失った子供たちへのWHOの福祉プログラムの根幹となった。58年には母と子の間にある生物学的な絆のシステムについて研究をまとめ、69年に『母子関係の理論』を出版。園中で新生児が最も親しい人を奪われ、不安定な新しい環境に移された場合に起きる発達の遅れや罹患率の上昇などを総称して「母性的養育の喪失」という言葉を使った。その言葉は、幼児に関わる専門職種の養成教育で必ずといっていいほど聞かされるものとなっている。

<田下昌明氏 プロフィール>
たしも・まさあき   1937年、旭川市生まれ。医学博士。医療法人歓生会豊岡中央病院会長。北海道大学医学部卒、同大大学院修了。日本小児科学会認定小児科専門医、日本小児科医会「子どもの心相談医」、日本児童青年精神医学会会員、日本家庭教育学会理事、北海道小児科医会理事









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