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2009年03月26日

道のアイヌ民族対策に噴き出た疑義

道のアイヌ民族対策に噴き出た疑義
アイヌ展示に力を置いて(?)リニューアルされた旭川市博物館

 アイヌ民族問題の深層を掘り下げている本誌にとって興味深い記事が3月25日付道新朝刊に掲載された。

  すでにご承知の読者も多いと思うが、要約すると、27年前から道がアイヌ民族の大学進学支援のために貸し付けていた25億円のうち21億円の返済が「免除」されていたということ。もうひとつは社団法人北海道ウタリ協会羅臼支部の会員問題で、96年に2人だった会員数が翌年に100倍になったり急に減ったりしている事実についてだ。

道のアイヌ民族対策に噴き出た疑義  約1000人に貸し出して返済した人がたったの1人という前者について言えば「免除」という言葉を道は使っているが、形のうえでは事実上の貸し倒れである。このことについてウタリ協会関係者は「元々給付事業だった歴史を理解して」などと道新にコメントしているが、確かに給付事業として76年度から始まったことは事実だ。だが、だからといって既得権を楯に現制度の枠組みを一方的に変えていいということにはならないのではないか。

 私が驚き、いささか呆れたのは記事の以下のくだりだ。

「卒業後、札幌市内の借家に単身で住む場合は、年収が585万円以下で免除になるという」

 年収が600万円近くにまで到達しなければ返済しなくていい──。こんな制度融資があれば是非利用してみたいものである。

(そういえば、公的資金の受け皿となっているウタリ協会会員資格は自己申告制であった)

  本誌が提起している「アイヌとは何か」という根源的なテーマはともかくとして、どのような団体であれ民族であれ制度の枠組みを遵守するというのは基本的義務である。また道は事実上の給付事業を「貸し付け」という美名に偽装していると言われてもしょうがないではないか。「貸すけど基本的に返さなくていいから」では、融資とは言えない。支援の必要を説明し、いっそ給付事業としてきちんと組み立て直すべきだろう。

  アイヌ民族への公的資金の「貸し付け焦げ付き」は、これまでの取材で「修学資金だけではなく住宅建設資金でも多く見られる」という指摘も多く聴いている。現在の流れから言えば、この分野にも検証が及ばない保証はない。

  ところで、本稿では詳しく触れないが、ウタリ協会羅臼支部の会員数が1年で百倍になったり急減したりしている経緯も傍目には極めて不自然で理解しがたいものだ。

「先住民族支援」という冠がついた公的資金の受け皿であるウタリ協会(加藤忠理事長)は、自らの姿勢と資質が問われていることを、まず自覚すべきだろう。



【3月25日付け道新記事】

アイヌ民族修学資金貸付 道、21億円の返還免除

  道は24日の道議会予算特別委員会で、アイヌ民族の大学進学支援のため設けられた道の修学資金貸付制度で2007年度までに貸し付けた約25億円のうち約21億円の返還を免除していたことを明らかにした。

  自民党・道民会議の小野寺秀氏(帯広市)の質問に答えた。

  修学支援は1976年度に給付金を渡す補助制度として始まり、82年度から貸付制度になった。「経済的な理由で修学が困難」などを条件に、私大生の場合は月8万2千円を上限に貸し付けている。しかし、卒業後の経済状況によって返還を免除。卒業後、札幌市内の借家に単身で住む場合は、年収が585万円以下で免除になるという。

 道によると、07年度までに貸し付けを受けた人は986人で、額は24億9千万円。うち21億円が免除され、返還したのは現在も返還中の一人だという。

 道は、こうした実態を見直すよう過去に国から指摘されたことを明らかにし、高井修環境生活部長は「関係団体などと協議しながら早期に検討していく」と述べた。これに対し、道ウタリ協会の阿部一司副理事長は「もともとは給付事業。そうした歴史をきちんと理解してほしい」と話している。

 また小野寺氏は、96年に2人だった道ウタリ協会羅臼支部の会員数が97年に200人以上に増え、02年に74人に減った経緯を質問。道は実態を調査する考えを示した。



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