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2009年01月23日

試されるメディア、北海道【3】


記事内容をめぐって民間企業2社から提訴された「ウィングSapporo」(写真は09年1月号)

 本誌が身を置く業界、北海道の月刊誌メディアの話題を追う連載の3回目である。今回は「ウィングSapporo」(株式会社ウイング出版・山澤靖司社長)をめぐる最近の動きについて触れていきたい。

 同誌(毎月1日発売)は04年2月に創刊され、発行人である山澤氏は財界さっぽろ(本社札幌・以下財さつ)の編集長を長年務めていたことで知られる人物だ。今は故人となった創業者・薩一夫会長の配下で長きに渡って筆をふるっていたが諸般の事情で財さつを辞め、自らの雑誌として立ち上げたのが、「ウィングSapporo」だった。

 この「新雑誌誕生」は、すでに出版不況や活字離れが顕在化していた当時、前向きなトピックとして大いに話題になった。販売面における読売新聞社の全面的なバックアップ、そして山澤氏が財さつ時代に培った政官財界の幅広いネットワーク…。5年前の今頃、本誌も含めて道内のメディア関係者は、新たに船出した「ウィングSapporo」の今後に注目していたものだった。

 その同誌が、この11月から年明けにかけて名誉毀損による損害賠償事件の被告として、立て続けに札幌地裁に提訴されていたことが分かった。

 訴えたのは、道内コンビニ大手として知られる株式会社セイコーマート(本社札幌・西山政市社長)、そして人材派遣道内大手のキャリアバンク株式会社(本社札幌・佐藤良雄社長)の2社(※ただしキャリアバンクは形式上、佐藤社長個人が原告)である。

 いずれも被告は発行元である株式会社ウイング出版をはじめ発行人である山澤氏、編集長の田中早苗氏となっており、賠償請求金額はセイコーマートが2000万円、キャリアバンクが1000万円。訴訟内容の詳細はともかく、両社ともウィング誌が近年掲載した一連の記事によって会社と個人の名誉を毀損され経済的被害、精神的苦痛を負わされたとしている。

 セイコーマートでは昨年11月に提訴、この1月20日火曜日に初公判が行なわれている。一方のキャリアバンク側の提訴は年明け早々で、裁判日程などはこれからという段階だ。

 雑誌社が記事の信憑性や事実関係にかかわって、道内有名企業から立て続けに訴訟を起こされるというのは穏やかではない。だが、どちらの民事訴訟も公判手続きに入ったばかりであり、利害がからんでいる案件だけに今の段階で軽々に是非を論じることは適当ではないだろう。

 政治家や芸能人が週刊誌などを相手取って民事訴訟を起こすケースが後を絶たないように、批判、検証報道を手掛けるメディアにとって訴訟沙汰というのは避けて通れない側面がある。本誌も37年の誌歴のなかで掲載記事をめぐっていくつかの訴訟を抱えたことがあり、私自身、被告側の証人として法廷に出廷した経験もある。

 だが一方で、法的手段を講じることは訴える側(書かれた側)にとってもそれなりの覚悟がいる行為だ。トラブルが公になることのマイナスイメージに加え、経済面や労力面での負担なども決して小さくない。これらを考慮し、記事中に事実誤認や誹謗中傷に当る表現が含まれていても訴訟をためらう、いわゆる「泣き寝入り」のケースが数多いのも事実だ。そういった意味では、今回、両社が提訴に踏み切った動機にも注目が集まるところである。

 メディアの活動は「言論・表現の自由」に担保されてはいるが、言うまでもなくその内容には社会的責任が伴う。本連載で述べてきたように情報や記事は、時に権力にも似た影響力を帯びる。それらを扱う立場であるメディアがまず寄り添うべきは「事実」であり、思惑や予断であってはならないのは当然のことだ。

「ウィングSapporo」の山澤代表は1月23日午後、本誌の電話取材に「セイコーマートの件は全面的に弁護士に任せておりコメントできない。キャリアバンクに関しての件は弊社に訴状が届いておらず、提訴されたかどうかも分からない」と答えている。

 本件に関しては、公判の進捗をにらみながら続報をお届けしたい。



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 昭和47年(1972年)創刊。生活者の視点と取材を重視する編集方針を創刊以来のポリシーとし、05年11月からは有限会社Re Studio(リ・スタジオ)が発行。道内有名書店などで毎月15日前後に発売。購読の申し込みや問い合わせ、情報提供などはサイドバーにある「編集部へメッセージ」からどうぞ。
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