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2008年12月11日

札幌市の早産男児死亡「今なら100%救えた」

札幌市の早産男児死亡「今なら100%救えた」

「昨年11月に亡くなった早産の未熟児は、今年10月から始まった今のシステムなら100%救うことができた」

 12月10日、札幌市保健センターで午後6時30分から開かれた第11回札幌市産婦人科救急医療対策協議会で委員の水上尚典氏(北海道大学大学院医学研究科教授)は「報道にあったように昨年11月に早産の男児が亡くなったことについて、そのことは非常に残念至極なことですが、当時は今のように3次救急の連携が強化されていなかった」と前置きした上でそう語った。語ってしまった。

「語ってしまった」というのも実は12月15日(月)に発売される本誌「北方ジャーナル1月号」で『メディアが過熱した札幌市早産男児死亡報道の「死角」』と題して記事を書いたのである。その記事の中では、10月からスタートした今の札幌市の産婦人科救急医療体制では起こり得ないと思われる1年前の早産男児の死亡事例を各メディアはなぜ今取り上げ、なぜ救急体制が変わる前の受け入れ困難件数をもって今の救急医療体制に不備があるかのように報道しているのか、その報道姿勢に疑問を投げかけた。

 水上委員が「今の体制では100%救えた」と発言したので、このコメントが明日の日刊紙に載った場合、本誌の記事のバリューは半減する。まだ半分の価値は残っているものの、取り急ぎウェブで記事を書いている次第である。月刊誌とは実に難しい。

 ただ、水上委員のこのコメントを明日以降、各メディアがどう扱うかについては注目に値するのではないかと記者は考えている。

「今なら100%救えた」のになぜ1年前には救う体制ができていなかったのかという批判を含めた表現で報道するのか、あるいは今の体制は1年前の出来事が起こり得ないシステムであると淡々と事実だけを伝えるのか。それとも、コメントにまったく触れないか──。

 昨年11月、札幌市内の女性が自宅で出産し、その未熟児が市内7つの医療機関に「受け入れ困難」とされ、最終的に受け入れた手稲渓仁会病院で10日後に亡くなった事実はたしかに悲劇だ。まだその悲劇がどのようなシナリオであったのかは解明し切っていないが、ひとつの小さな命が救えなかったことは悲しむべきことである。
 ただ、繰り返すが今回の事例は今年10月以降、起こり得ないと考えられるものである。それが今頃になって、12月2日の第1報から約1週間に渡って過熱気味の報道が展開された。

 「早産男児死亡」を過熱報道したメディアが、今回の「今なら100%救えた」というコメントを扱えば「じゃあなぜ今頃、大々的に報道したのか」という矛盾を抱えることにならないか。

 また、新体制となった今年10月から3次救急で札幌市内の医療機関が受け入れを断った事例がゼロだったことは多くのメディアが知っていたはずだ。一連の報道が始まる以前の11月13日に開かれた第11回札幌市産婦人科救急医療対策協議会には本誌記者も傍聴していたが、そこでの話を聞いていれば知り得た事実であり、この協議会では市政記者だけではなく多くのメディア関係者が来ていた。にもかかわらず、10月までのデータだけをもとに『市立札幌病院受け入れ拒否13件』などと強調し、あたかも現在の産婦人科救急医療体制に大きな欠陥と不安があるように(もちろん現行体制が100%とは言わないが)記述した報道が散見された。

 今回の水上委員発言は、そうしたメディアの報道姿勢、偏った視点を白日の下に晒すものとして、その扱われ方は注目に値する。

 そんな水上発言が出た対策協議会だったが、そのほかにどのようなことが話し合われたのか。そのことについてはまた後日、記事をアップしていく予定だ。

 ところで、命を扱う上で「100%」、「起こり得ない事例」というのはもちろんあり得ないことで、水上委員も「100%絶対救える」という意図では発言していないだろうし、本記事中の「起こり得ない」という表現もそういう意味では適切ではない。ただ、それを「少なくとも2カ月間は起きておらず、今後もそう起こらない事例だろう」などとイチイチ書くと回りくどいのであえて本記事中では「起こり得ない」などと表現したことを最後に付け加えておく。

(は)

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Posted by 北方ジャーナル at 00:44│Comments(0)ニュース
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