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2008年09月02日

「福田首相辞任」で溶解する政局

「福田首相辞任」で溶解する政局
福田首相の辞任会見を伝えたテレビ(9月1日午後9時半過ぎ)

 月曜日夜、いきなりテレビ各局が「9時半から福田首相が辞任会見を急遽開く」ことを伝えた。私は、総理大臣官邸で開かれたその緊急記者会見の一部始終を家の食卓から眺めていたが、しだいになんとも寒々しい思いにかられてきた。福田は「この際、新しい布陣の下で政策を進めてもらうことがもっとも適切と考え、辞任を決意した」と述べた。だが、この台詞をわずか一年前にも国民は聴かされたのではなかったか。

 安倍は健康上の理由で辞めたが、自分は政治状況を考えて辞めるので全く違うのだと福田は抗弁した。だが、行き詰まって唐突に自ら政権を放り出すという点では何ら変わるところはない。度重なる無責任というほかなく、この国の政治、あるいは自公政権の行き詰まりが来るところまできたという感を強くしたのは私だけではないだろう。

 安倍前首相の時と同様に自民党の幹部が一様に驚いてみせ、野党がいっせいに批判する。識者らがコメントを寄せ、次はどうなるとよってたかってあーじゃない、こーじゃないのオンパレード。いったいいつまで我が国は、こんなことをやっているのか。首相にどんなストレスが、どんな計算が、そして来る解散総選挙に向けどんな党内駆け引きがあったかは、もはやどうでもいい。ひとつだけ言えることは、再び我が国は国際社会に恥をさらし、内外にわたって我が国におけるリーダーシップの欠如という状況を露呈したということだ。
 
「この1年間で大きな前進のための基礎を築いた」と福田は自負したが、私はこの言葉を聴いて耳を疑った。一カ月前に安倍時代の「お下がり」を払拭すべく改造内閣を発足させ、自前の政権をつくりあげたリーダーの言葉とはとても思えなかったからだ。国民はもとより召集された新閣僚の面々もいい面の皮である。自分を呼んだボスザルが山から逃げてはしゃれにもならない。会見でも自慢した社会保障の枠組みを考えるための自らの諮問機関、国民会議の最終答申も10月に控えたままだ。これまで半年以上にわたって積み上げてきた彼らの努力というものを福田は、いったいどう考えているのだろうか。

 福田は記者との質疑応答の最後のあたりで「自分のことは客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです」とやや感情的な口ぶりで返した。なるほど確かに客観的に見たら自民党への風当たりは強く、総選挙は惨敗になるかもしれない。「そうなれば政権交代を招いた内閣として自分の責任が問われ、戦犯として歴史に名を留めることになる。万が一にも父(故・福田赳夫元首相)に申し訳が立たない」というのが福田の本音ではないのか。

 私は、さる7月の北海道洞爺湖サミットの最終日に行なわれた議長総括、福田の記者会見を間近に取材していた。その時の様子の感想をひとことで言えば「言動に全く余裕がない」というものだった。重責? 政局の混迷? 安倍といい福田といい、いい加減にしろと言いたい。仮にも国のトップとして、政治家として、それらをエネルギーにするぐらいの覚悟がないなら、いますぐ首相どころかバッヂを外すべきである。

 余談ながら面白かったのはテレビメディアの右往左往ぶりだ。キャスターやコメンテーターらが、いかにも急ごしらえといった感じで、あわてふためき原稿を読み、画面の切り替えもぎこちなかったりした。今回、福田「前」首相には、マスコミ特有の「予定調和」を崩してくれたことだけには、感謝しておこう──。




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