さぽろぐ

新聞・ニュース  |札幌市東区

ログインヘルプ


2008年07月24日

紋別でピンホール写真祭

紋別でピンホール写真祭
 7月28日(月)から8月17(日)の期間、紋別市を舞台に国際的なピンホール写真イベント「オホーツク・紋別 ピンホール写真フェスティバル」(主催:同実行委員会 委員長:宮川良一紋別市長)が開かれる。期間中は紋別博物館、まちなか芸術館で国内外の写真家による作品展、シンポジウム、ワークショップなどが行なわれ、夏の紋別はピンホール写真一色となりそうだ。

 ピンホールカメラは、レンズを使わずに小さな穴から光を取り込むだけで撮影する。デジタルカメラのような便利さとはかけ離れているが、異空間を撮影したかのようなその仕上がりや、ゆっくり時間をかけて被写体と向き合う“スローな写真”として世代を問わず愛好家が増えている。

 昨年、ピンホール写真の可能性を学術面、芸術面から追究、その普及を図ろうとピンホール写真芸術学会(PPAS)が国内外の作家、研究家によって設立され、その設立総会に合わせて京都で11カ所のギャラリーを舞台に大々的なイベントが行なわれたが、今回の紋別フェスティバルはその第2幕という意味合いも含まれている。

 PPASの鈴鹿芳康会長(京都造形芸術大学教授)は、ピンホール写真の魅力と可能性を次のように語る。

「ピンホール写真の露光時間は被写体や天候によってさまざまなので、ベテランといえども仕上がりは予想しきれません。デジタルカメラのような便利さとはかけ離れていますが、針で穴を開け、焦点距離をとり、被写体とじっくり向き合う時間は自分自身と真摯に向き合う時間でもあります。自分の五感を信じて露光時間を決め、小さな孔から差し込んだ光が像を結んだとき、頭ではなく身体を通じて感動を味わう。この感動こそがピンホールカメラの魅力かもしれません。
 ピンホールカメラで撮っていると、人間の目には見えない時の流れや、変わることのない物事の本質に気づかされることもあります。長時間露光で撮ることで、一瞬の姿ではなく、時の経過を一枚の写真にとどめることができるからです。たとえば空の雲を見たとき、私たちは全てが同じ方向に同じ速度で進んでいるように感じますが、ピンホール写真でその痕跡を辿ってみると、実は上層部と地上に近い層では逆の方向に流れていたり、雲が私たちの想像を遙かに超えて自由奔放に動き回っていたりしていることが分かります。雲ひとつとっても、私たちは見ていた“つもり”だったのだ、分かっている“つもり”だったのだと、ピンホール写真との付き合いが長くなるほどに、人間の目に見えるものは、この世界のごく僅かな表面なのだと思えてきます。そして、その背後には、悠々と流れる時間と変わることのない物事の本質があるということに気づかされます。すべてにスピードが求められている時代だからこそ、こうしたスローな視点が大切なのではないかと。
 流氷が接岸する最南端の地である紋別市では昨今、地球温暖化の影響で流氷が接岸する量が年々減少し、生態系の変化や漁業への悪影響が懸念されています。そうした地での写真フェスティバルの開催することで、スローな写真技術であるピンホール作品で地球環境問題と人間の生き方に風穴を空けたい」

紋別でピンホール写真祭
普通のデジカメ写真(左)とピンホール写真(右)の比較(本誌撮影)

フェスティバルの詳しいプログラムは以下の通り。作品を楽しむだけではなく、国内外の作家たちが何を考えピンホール写真を撮り続けるのか、ぜひ交流の中で感じてほしい。(は)

◆写真展
「エリック・レナー&ナンシー・スペンサー展」紋別市立博物館市民ギャラリー
「エドワード・レビンソン展」紋別市立博物館市民ホール
※開催期間 7月28日(月)~8月17日(日)9:30~17:00

「ピンホールフォトコンテスト応募作品展」
「ピンホール写真芸術学会 会員作品展」
「京都工芸繊維大学学生作品展」
「紋別ピンホールクラブ・市民作品展」
※会場 まちなか芸術館多目的ホール 開催期間 8月1日(金)~8月15日(金)9:30~17:00

◆イベント
8月7日(木)
ガリンコ号での船上パーティー(前夜祭) 18:00開始

8月8日(金)
受付開始9:30
◇シンポジウム(1)「今、世界のピンホールは」
会場 紋別市文化会館ホール 10:00~11:45
講演 エリック・レナー&ナンシー・スペンサー(ピンホール・リソース主宰)「小さな穴から世界へ」
対談者 鈴鹿芳康(PPAS会長・京都造形芸術大学教授)
サポーター エドワード・レビンソン(PPAS会員)、林敏弘(PPAS理事)
◇2008年度ピンホール写真芸術学会総会
会場 紋別市立博物館郷土学習室 12:00~12:45
◇シンポジウム(2)「スローライフ/スローフォト」
会場 紋別市文化会館ホール 13:00~16:30
コーディネーター 渡辺信夫(PPAS副会長)、原田憲一(PPAS理事・京都造形芸術大学教授)、青田昌秋(北海道立オホーツク流氷科学センター所長)、鈴鹿芳康(PPAS会長、京都造形芸術大学教授)
◇懇談会 18:00~20:00

8月9日(土)
受付開始 9:30
◇基調講演 「スローライフとエコロジーの心」
会場 紋別市文化会館ホール 10:00~12:00
講演 辻信一(明治学院大学国際学部教授・ナマケモノ倶楽部世話人)
◇紋別市内ガイドツアー(兼撮影会)13:00~18:00
◇市民のためのワークショップ
会場 紋別市立博物館工芸室 13:00~17:00

問い合わせ先:実行委員会事務局 紋別市立博物館 tel.0158-23-4236



同じカテゴリー(文化(文芸・アート・音楽))の記事画像
北方ジャーナル1月号の誌面から 石川寿彦氏による漫画「回顧2023 コロナは去ったが…」
ナルク札幌のピンコロ劇団が文化祭で見せたシニアの底力 大盛り上がりの笑劇にやんやの拍手
現役50周年のフリーキャスター佐藤のりゆきさんがファンとの集い「トークショー&縁かいパーティー」開催
名和豊春・北大総長解任損害賠償事件が本人尋問後に異例の結審。判決は来年3月13日に下される見込み
縄文時代の国宝・文化財を一堂に集め「北の縄文世界と国宝」展を開催中 多種多彩な道内遺跡の出土品
【7月号の誌面から】北海道フォトエッセイ 「北見市のルーツはキリスト教団体  北光社開拓記念広場」
同じカテゴリー(文化(文芸・アート・音楽))の記事
 北方ジャーナル1月号の誌面から 石川寿彦氏による漫画「回顧2023 コロナは去ったが…」 (2024-01-03 18:08)
 ナルク札幌のピンコロ劇団が文化祭で見せたシニアの底力 大盛り上がりの笑劇にやんやの拍手 (2023-12-02 00:27)
 現役50周年のフリーキャスター佐藤のりゆきさんがファンとの集い「トークショー&縁かいパーティー」開催 (2023-10-29 18:31)
 名和豊春・北大総長解任損害賠償事件が本人尋問後に異例の結審。判決は来年3月13日に下される見込み (2023-10-20 23:44)
 縄文時代の国宝・文化財を一堂に集め「北の縄文世界と国宝」展を開催中 多種多彩な道内遺跡の出土品 (2023-08-22 17:01)
 【7月号の誌面から】北海道フォトエッセイ 「北見市のルーツはキリスト教団体 北光社開拓記念広場」 (2023-06-21 23:48)

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

QRコード
QRCODE
削除
紋別でピンホール写真祭
    コメント(0)