2008年01月18日
「北方ジャーナル」73年1月号より「すすきのエンマ帖」
好評の「懐かしのジャーナル」コーナー。今回も1973(昭和48)年1月号から「ススキノえんま帖」をご紹介します。サッポロの70年代の雰囲気が伝わる文章をご堪能ください。なお、文中の固有名詞や店名、住所、価格などは当時のものですのでご注意を。
すすきのエンマ帖
穴場はどこにあるか?
地方の、とくに本州方面から来札した立派な?紳士によく聞かれるのが「ススキノの穴場ありませんか」というセリフである。
ススキノに限らず、銀座でも博多でも、いま売り出し中の名古屋、横浜でも、はたして"穴場"はあるのだろうか? そしてその「アナバ」と称する場所はどのようなところを指して言うのだろうか。
金田一京助監修の国語辞典にも、三省堂の広辞林にも「あなば」という項目はない。
大槻文彦の大言海にさえ出ていない。
となると、馬を鹿と思った漢の皇帝という「馬鹿」の語源ぐらいしか知らぬ奇厳説っ子程度の頭では解説など出来はしない。
しかし世の中、「出来るけどしたくない。したいけど出来ない」などとオツにすましてはいられないので説明しよう。
「穴」というのは、物事のカナメとなるところ。競馬などのうまい儲け口という意味や、温泉場の宿屋などの客間というような意味もある。
この言葉をタヨリに考えると、もともと穴場というのは、旅先の温泉場などに芸者さん的なオンナがいて"ひょっとするとちょっとするとナニできる"ところを指して言うのが「ことはじめ」であったのではないだろうか。
それがだんだん広義に解釈されて、飲み屋、釣り場などの人知れぬ"イイトコロ"にまで使われるようになった。
とにかく、そんなあやふやな珍説、奇厳説は別として、ススキノに穴場はあるのかないのかという話に戻そう。
レッツ・ゴー「ピンキー」
みなさんの興味を半減させて申し訳ないが、ススキノに穴場はない―というのが結論だ。
というのは、たしかに穴場"的"なものは存在していても、その場所にたどり着くまでに、あまりにも時間と金がかかり過ぎてしまって、確率が非常に低いということなのだ。
一見(いちげん)さんはダメという訳ではないから、ひょっとしてひょっとすると、ボルテージの高い場面や場所に出逢うことはあっても、訪ねた軒数に対してのその比率はあまりにも低過ぎる。
ススキノに通う回数が多ければ多いほど、その数に正比例して穴場に出っくわすこともあろうが、ふらりと札幌へきて、すぐというチャンスを期待するのは虫が良すぎる。
ある人は北二十四条という。またある人は豊平川の近くがいいという。
良いというのは、チャンスがあるという意味だ。その意味では南七西九の東本願寺あたりもいいという。
しかし、自分が行ったこともなく、人の話を聞いただけというのは書きたくない。
そこで奇厳説っ子が体験した店だけを紹介しよう。
まず新しい所ですずらんビルの「ピンキー」―ここの誰とまでは書けないが、ここでは二度性交(失礼!成功)している。
通ったのは二晩続けて三回。四回目は電話だけ。背の低い、あまり美人じゃない娘の方がいい。早い時間(七時頃)一回と、遅い時間(十一時頃)の二度行くのが成功率は高い。
会話のポイントまで紹介できないが、二人座ったら、お目当ての女性でない方を口説くことだ。
そして電話で、もしくはもう一度その店に行って本命の方を指名をすること。金? そんなもの払うぐらいなら屋台団地のほうが早い。
ウワサによると「ピンキー」は全員パンスト禁止という命令?が出ているんだそうだ。おまけにワザとボックス席の椅子をせまくしてあるから、黙って座ればピタリと…でアル。
十二月は二千人の恋の月!
ここがダメならアイシンビルの「美人娘」―ちょっとヤセ型のこれまた背の低い娘だ。
ピンキーより高くつく(飲み代ではない、女の子に対してだ)がそれはそれなりのムードと味がある。そのものズバリの口説きの方がいい。
ここもダメなら帰った方が良さそうだが、もう一軒教えよう。グリーンビルの「月世界」―髪の長い娘だ。
もっと詳しく書きたいが、ユルセ!全体に通じるのは、変に愛想がよくて喋る女より、口数の少ない、ちょっとキカナイ感じの女で、自分の手の置き所がいつも変化する娘を狙うことだ。
それに、人相学と心理学にもちょっぴり長けていなくては、タナボタなんてまず百軒に一軒ぐらいのものだ。
タナボタをアテにするなら、クリスマスの二日間と、年末の30・31日を狙うこと。
さるモーテルのMY氏曰く「クリスマスイブには約二千人の女性が処女を失う」
これを聞いたAK氏「君、二万人の間違いでしょう」―これほどなのである。
なぜXマスと年末がいいのか、女性がムードに弱いとかなんとかだけが理由ではない。
どんな女にだって、年に一度や二度ぐらい、お茶を一緒に飲む相手はいるだろう。
しかし、Xマスイブとか年末となると、男はその中でも本当に一緒に過したい女を選ぶことによって、どうしてもアブれる女が出てくるワケだ。アブれるぐらいだから顔が悪いということにはならない。事実、南興ビルのX子も、日劇のビルのX子も顔もスタイルもいい。
さあ―出発しよう。十二月は穴場の月、恋の月。<奇厳説>Σ
□ミニ情報□
▼…百レーン時代に突入
"ポストボウリング"どこ吹く風といわんばかりに、遂に百八レーンの大ボウリング場がオープンする。十二月一日オープンするニューパークボウル(中央区南十四西二)がそれで、鉄筋鉄骨VS工法三階建て、延べ一万三千四百平方メートルの二、三階それぞれに五四レーンをつくるもの。加えて青木商事(本社・釧路)のアオキボウル(中央区南四西五、一一四レーンの予定)もそれぞれ建築中、建築予定で、いよいよ札幌も本格的な百レーン時代を迎えることになる。
▼…「チセ」のある店
きょう土料理亭「杉乃目」(中央区南五西五)の庭にアイヌのチセ(家)が登場した。これは社長の杉目繁雄さんがアイヌ文化の紹介もかねて、北海道的なムードを出そうと手がけたもの。アイヌ文化に造詣が深い杉目さんだけに、単なるイミテーションだけではなく日高管内・平取町二風谷部落を数度にわたって訪れ研究した。設計・製作には同部落の萱野茂さんが当たり、同部落から運んだという丸太を柱にかやぶきの本格的なもの。六畳間の広さで、石油ランプ、炉かぎ、ヨシのクキを編んだ敷物など本物の北海道的ムードがいっぱいで、焼物や鍋物を供しているが、予約しなければ使えないというほど人気を呼んでいる。
▼…一号店はクラブ「竹笛」
インテリアのすばらしさでススキノっ子をうならせたクラブ「草笛」(中央区南四西四すずらんビル)が近年中に数軒のクラブを準備しているが、その第一号として十一月七日、南五西四「大橇亭」二階にクラブ「竹笛」をオープンした。
叶えい設計事務所の設計・施工で、アメリカ産をはじめ道内では入手できない材料をふんだんに使用しており、「草笛」に続いてまたまた話題を呼びそうだ。
▼…「亘」が洋食の店を
天ぷら、おでん、郷土料理など日本料理の名店として知られる「亘」(中央区南三西四)が本格的なビーフシチューの店「さんとれワタル」を中央区南三西十にオープンした。ビーフのほかタン、ハンバーグのシチューもあり、ランチ、定食、サラダ類も揃っている。中央区役所なども近くにあり、カウンター十席、テーブル十一卓の店内も昼食時にはいつも満員になる盛況ぶりをみせている。
▼…「味力」が支店をオープン
すすきのの真中で田舎料理が食べられると、いまや名物的存在になった「田舎料理の味力」(中央区南五西二)が南五西四に支店をオープンした。本店同様、渋い木組みの落ちついたつくりだけに、ススキノの喧噪さをのがれて"ふるさと"の雰囲気にひたるにはぴったり。
カウンターや小あがりのほか、八人が掛けられる大きな炉ばたがそのムードをいっそう盛り上げている。 Σ
■今月のすいせんコーナー
とんかつ『玉藤』
とんかつといえば玉藤、玉藤といえばとんかつ―これほど名の通っている名店も数は少ない。本店は美松ビル(中央区南五西三)だが、支店はここ拓銀本店前の大通西四のほか、北二条と平岸、さらに北二十四条にもオープンした。
駅前通りに面した大通店(つぼや二階)は、テーブル八卓とカウンターのほか小あがりもあるしゃれた造りで、ご飯となめこ椀、お新香、サラダ付のスペシャルとんかつ定食(ヒレカツとも)780円、サラダが付かない場合は580円。このほか串かつ定食380円、エビフライ定食650円。一番なじみの深いかつ重も、ミソ椀とお新香付で350円というのもうれしい。冬将軍を前に、スタミナはまず「玉藤」で。
(記事は1973年1月当時のものです)
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Posted by 北方ジャーナル at 23:00│Comments(0)
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