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2011年01月25日

裁判所が開示した文書を公開する〔1〕

裁判所が開示した文書を公開する〔1〕
 札幌地裁が「存在しない」とした文書を、高裁では開示して貰うことができた
 (写真をクリックすると「存在しない」文書を読むことができます)


 1月15日、札幌高等裁判所と同地方裁判所から郵便が届いた。昨年10月19日付で開示請求していた司法行政文書(裁判所にある文書)の一部を開示する、という連絡であり、開示期間は1月17日から同21日までとある。初日の17日午後、さっそく高裁・地裁を訪ね、当該文書をすべて謄写(コピー)してきたので、ここにその一部をPDFファイル形式で公開する。リンクに少し時間がかかるかもしれないが、その点はご容赦願いたい。

 そもそも、最初に知りたかったのはこれであった。

裁判所庁舎の平面図

 とくに平面図を見たかったわけではなく、庁舎1階にある「記者室」の面積を知りたかったのだ。裁判所を取材する北海道司法記者クラブは、お隣の札幌第3合同庁舎(札幌高等検察庁同地方検察庁などが入居)1階に記者室を持っている。庁舎管理庁の高検によると、面積は約69㎡(なぜか概数)。内部は、こういう感じだ。

裁判所が開示した文書を公開する〔1〕


 写真は、昨年10月26日に同室内で記者会見が開かれた時のもの。画面では見えないが、左奥に机がいくつも並んでいて、記者クラブ加盟社の記者さんたちがそこで原稿を書いたり書かなかったりしている(らしい)。奥まで撮ることができないのは、同室を含む庁舎内が原則撮影・録音禁止だから。庁舎管理規定などに明文化されてはいないが、なぜかそういうルールがあるため、地検の定例会見も撮影禁止とされている

 ただ、どういうわけか記者室内での記者会見については録音・撮影が認められている。記者クラブは家賃などの使用料を納めていないので、部屋の持ち主は国ということになるが、日本にはあちこちにこういう治外法権(みたいなもの)があるのだ。そんなわけで、会見の時だけは室内を撮影できるのだ。何もない時は、撮ってはいけないのだ。一昨年4月、国ならぬ記者クラブに撮影のお伺いを立ててみたが、2カ月後に文書で断られてしまった。まあ、会見の時に撮れたからよいのだけれども。

 くだんの司法記者クラブは、実は裁判所庁舎内にも記者室を持っている。1階の東端のほうに「記者室」という標示があるので、関心のあるかたは見物に行ってみるとよろしいかと思う、国民が裁判所に出入りするのは自由だから。

 この記者室を2、3回訪ねたが、毎度鍵がかかっている。中を見たいが、入れない。ひねもす待機して鍵が開くのを待つのも非効率なので、裁判所に訊いてみることにした。どういういきさつでこの部屋が生まれ、面積はどのぐらいで、中はどのようになっていて、どういう人が使えるのか(「記者クラブ加盟記者以外の国民は立入禁止」とかだったら法の下の平等に反すると思うけど、司法府としてどうなんですか)―。

 すると、「取材禁止」と言われたのである。昨年10月7日のことだ。理由は、説明して貰えない。「記者室の面積を」との1問に、2日間に亘って地裁と高裁がチームを組んで対応してくれた挙げ句、回答拒否となった。いちおう記録しておく。10月5日夕「時間をください」(地裁)、同7日午前「高裁から回答します」(地裁)、同午後「すぐには回答できません。上に確認します」(高裁)、同夕「あなたの取材には応じないことを決めました」(地裁)。

 裁判所には、独自の情報公開制度がある用紙に記入して窓口(地裁総務課とか)に提出するだけでよく、行政府の開示請求で発生するような費用(収入印紙を貼るルール)もいらない。つまり、タダ。

 タダなら、使うべし。取材を拒否された以上、そうするより仕方がない。10月19日付で、記者室の面積を記した文書やら見取り図やら内部写真やらを開示請求した。ついでにほかにもいろいろ書き連ね、4枚にまとめて高裁と地裁に出した。字が下手くそで恐縮だが、こんな感じである。

裁判所に提出した開示請求

 自宅住所の一部(番地とアパート名と部屋番号)を墨塗りさせていただいた。私自身は個人情報全公開主義だが、アパート名や部屋番号を記すと大家さんとかに迷惑をかけることになるかもしれないので、ここでは伏せる。

 さて、提出から1カ月のちの11月19日、両裁判所からこんな書類が届いた。

札幌地裁からの「もうちょい待て」

札幌高裁からの「もうちょい待て」

 文面はまったく同じ。つまり、1カ月経ってもまだ開示すべきかどうか決められないのでもう少し待て、という意味の連絡だ。蛇足ながら、地裁はA4判の封筒で、高裁はA4三つ折りの大きさの封筒で送附してきた。高裁のほうがわずかに郵便料金を節約していることになる。というより、呼びつけてくれたら電話代だけで済むのだけれど。
 
 さらに1カ月後の12月20日、今度はどちらからも紙切れ一枚届かなかったので、電話をかけてみた。年内には開示されるかという問いに、地裁は「わかりません」、高裁は「難しいです」。60日経っても公開・非公開が決まらないとは、よほど捜しにくい場所に保管しているのだろう。きっと年末の大掃除かなんかで出てくるだろう。そう信じて年を越し、2011年元旦。裁判所からは書類も届かなければ年賀状も届かない。元判事の人からは届いた、普通の年賀状だったけれど。

 で、1月17日である。ここでやっと、冒頭の件に戻ることになる。さんざんスクロールしたので、最初に貼った文書へのリンクをもう一度こしらえておく。

裁判所庁舎の平面図

 知りたかった情報は、図面に明記されていた。「報道記者室 26.94㎡」。ついでに、意味ありげな墨塗りまで眼にすることができた。大きな黒が2カ所、室名の墨塗りが2カ所。かえって気になる秘密の部屋。と、思い出したことには、5年ほど前に図面東端の大きな墨塗り地帯に通じる扉を誤って開けてしまったことがある。なんか煙草の匂いが漂ってきたが、喫煙室が左隣とはいえ煙は遮断されているし、あれはいったいなんだったのだろう。

 ということはともかく、この書類。

地裁の「記者室設置経緯不開示」

高裁の「記者室設置経緯不開示」

 1964年供用開始の庁舎に「報道記者室」が設けられたいきさつを、裁判所は開示できないという。庁舎管理庁ができないというなら、これはもうしょうがない(正しくは、そういう事情を記した文書が「存在しない」)。紙の好きなお役所は何でも紙で決めているのかと思ったら、そうではなかった。安くないお金を使って部屋を一つこしらえた根拠を国民に示す材料を、裁判所はまったく持ち合わせていないのだ。ついでに書いておくと、その部屋の内部を撮影した写真も「存在しない」。代わりに撮影してデータを寄贈してもよいのだが、どうでしょう。

 というところで、あまりにも長くなったのでこのへんで。次いで、裁判所と記者クラブとの「懇談会」とか法廷内の「記者席」とか「録音・撮影」のルールとかについて裁判所が開示した文書を公開することになるが、それは次回の講釈で。急に「取材禁止」を言い渡された背景には何があったのかも、ついでに綴ってみることにする。  (ん)



Posted by 北方ジャーナル at 20:42│Comments(0)
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