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2010年01月27日

記者クラブの居心地は如何?

記者クラブの居心地は如何? 本誌で記者クラブのことを追っかけている小笠原淳記者がたまたま1月中旬に起きた「石川騒動」のあたりに上京する機会を得て、霞が関を回っていた。

 帰札した彼から色々聞くと、亀井静香大臣が仕切る金融庁の記者会見にとりあえず出席することができたとのこと。ご承知のように同庁では亀井大臣の主導によって、同庁記者クラブ未加盟のメディアに対しても取材のアクセス権を認め、クラブ向けとは別の会見を定期的に開いている。

 まあ要は、本誌としては、色々知りたい一心で、変化が起きている現場に首尾よく紛れ込んだということなのだが、いずれにしても、これまで霞が関の記者クラブとは全く縁がなかった一介の地方誌が、大臣から「どうぞ」と言われるようになった現実には興味深いものがあった。

(写真は08年の洞爺湖サミットに伴い留寿都村に開設された国際メディアセンター)


 記者クラブ制度の弊害は、国内外の識者やジャーナリストたちによって、さまざまに指摘されて久しい。中でも霞が関の東京高裁内にある司法記者クラブメディアのあり方などは、その影響力という点で、別格と言っていい。

 加盟するメディアは朝日、読売、共同など新聞・通信13社と、NHK、日本テレビなどテレビ6社。担当範囲は検察庁、裁判所だ。前述のように、一部の省庁で記者クラブ以外のメディアにも取材の門戸を開ける動きが始まっているところだが、ここでは全くそんな気配は無い。

 彼ら司法記者クラブ員らは、日頃から検察や裁判所が発表する摘発、公判情報を彼らに限定された会見などを通して独占的に入手している。たとえば事情聴取や逮捕、起訴と言った事柄だ。我々が用語としてよく使う「玄関ネタ」というのが、それに当たる。要は役所が会見などで明らかにする“表情報”のことである。

 同時に彼らは「裏」の情報も手にすることができる。たとえば、今回の「石川事件」に照らせば逮捕後の供述内容などだ。大きなヤマが動いた時、司法記者クラブ員は日頃から培っている検察幹部との個人的な繋がりをフル稼働させ、匿名を条件に話を聞き出し「関係者の話で分かった」という記事をモノにするわけだ。

 これらの情報は、デスクからの矢のような催促のなかで、およそ独自の検証を経ることなく矢継ぎ早に書かれて世に出て行く。かくしてメディアは「特ダネ」を手に入れ(あるいは“特落ち”を免れ)、検察は世論操作が可能となるという寸法だ。

 こういう既得権益と無検証をベースにした報道のあり方が、昨今あらためて問題視されているわけだが、少なくとも私は、この類いの情報が、これまで「分かった=判明=事実」として書かれ、読者に伝わってきていることについては、どうしても納得できない。

 百歩譲って、検察幹部から何を聞き出そうとも、独自の裏が取れておらず、まして法廷での争いが待っている案件ならば、「検察あるいは捜査関係者によれば~」と情報ソースを明示し、なおかつ「~と話している」という表現にとどめ、事実かどうかを留保すべきである。

 報道として基本の基本がなされていないのは、多分内心、現場の記者たちも承知しているのではないか。それにしても彼らをマヒさせているものは、いったい何なのだろうか。官僚の無謬性(笑)?、勘違いに跨がった正義感や特権意識(再笑)?、または特定のメディアに許された免罪符?

 ちなみに仮に検察官僚が虚偽の情報を流し、それを司法記者クラブメディアが事実として報道した場合、後日、その顛末が明らかとなり、関連して名誉毀損や人権侵害が発生したとしても、メディア側が責を負うことはない仕組みとなっている──。あな恐ろしや、これぞ究極の“書いたもん勝ち”である。   
(く)




Posted by 北方ジャーナル at 01:06│Comments(0)
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