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2009年06月30日

子供は誰のものか

子供は誰のものか

田下昌明氏の「今こそ育児を見つめ直そう」(第2回)
※前回記事はコチラ


◆3つの育児方針◆

 ──著書『真っ当な日本人の育て方』では、3つの問いをされていますよね。

子供は誰のものか。

何のために子供を育てるのか。

どんな大人になってほしいのか。

その問いの答えが3つの育児の目標ということですね。

田下「この3つの目標がこの本を貫いているんです。まず子供は誰のものか。それは『子供は日本人社会のもの』で、親はその養育を社会に委託されているのです。これは裏を返せば、親の持ち物ではないということです。もし親の持ち物だったら、親が泥棒なら自分より上等な泥棒になるように子を教育するでしょ?」

 ──たしかに、子供が親のものであったら社会が成り立たないですね。

田下「日本人ではなく、もっと大きな規模で全人類のために子供はあるんだとすると、それでは誰にもとらえどころがなくなってしまう。育児の目標にならなくなってしまうんですね」

 ──間違いではないけれど、馴染まないかもしれませんね。

田下「次は何のために子供を育てるのかと。それは『日本の文化を継承し未来に伝える日本人にするため』です。生まれたばかりの赤ちゃんは私たちと同じ姿かたちをしていますが、まだ人間ではありませんし、日本人でもありません」

 ──赤ちゃんは人間ではない?

田下「生まれたばかりは人間ではないんです。昔、インドで狼に育てられた2人の少女がいましたね。彼女たちは赤ちゃんのときに狼にさらわれ、育てられました。保護された後に人間として生活していけるように手厚く養護されましたが、周囲の努力も空しく数年後に狼の習性を残したまま死んでいきました。生後間もない赤ちゃんがまだ人間ではないということの証明です」

 ──その赤ちゃんを人間にし、日本人にすることが育児の目標であると。

田下「どうやって赤ちゃんを人間に、そして日本人にするかというと、それは言葉の正しい使い方、友達との付き合い方、食べ物の作り方、食器の洗い方など、私たち日本人の習慣、風俗、いわば生活の知恵を子供に伝えることです。すなわち文化の継承ということです。もしこれが途絶えるようなことになれば日本の文化は消滅してしまうし、文化が消滅すれば日本人という民族はいなくなるということです」

 ──第3の問い、どんな大人になってほしいのかについては。

田下「いわば期待される大人像なんですが、いろいろと解釈はあるかと思いますけど、私は法律を守る日本国民になってほしいと思っている」

 ──日本国民と日本人はイコールではないと。

田下「日本の文化を継承している日本人と日本国籍を有する日本国民は必ずしもイコールではありません。日本人より日本人らしいお相撲さんがいたり、拉致問題で日本人とは思えないような発言をする官僚がいたりしますよね。日本人と日本国民の両面をきちんと持ってほしいという意味なんです」

◆偉人伝を読ませよう◆

 ──田下さんは著書のなかで子供に理想の大人像を自分で描かせるために『偉人伝を読ませたい』とおっしゃってますね。今時、なかなか面白いことをおっしゃるなと思いました。

田下「人を幸せにした、多くの人を救ったという人の伝記がいいですね。これまで話した3つの育児方針によって赤ちゃんは育てられるべきなんですが、子供は成長するにつれて今度は自分で2つの人生指標を立てなければなりません。『誰のようになりたいのか』、そして『何に人生を賭けるのか』ですね。この指標を立てるときにお手本になる、子供が尊敬する人物が心の中にいなければなりません。今は様々な情報が溢れて、偉人伝は価値を失ったように見えますが、現代の子供にもやはり『あの人のようになりたい』と思い入れることができる人物が必要なんです」

 ──偉人伝は今もまったく価値を失ってはいないと。社会のもの、文化の伝承など、3つの育児方針は言葉としては難しいものに感じますが、これらは戦前には意図することもなく自然と育児に溶け込んでいたわけですよね。だが、それが敗戦後大きく変化した。私はさきほどレイプされたに等しいと表現しましたけど、食事や文化だけではなく日本人の育児も外的要因があって変容したと思うんです。

田下「一億総懺悔という言葉がありますが、日本人がわざわざ自分たちの持っていたものを捨てた面もあるんですよ。戦争に負けた後悔が大きく作用している。過去を一切捨てようと白紙状態に近くなった日本人に外からの力が作用して、それが非常に大きな効果をあげています。外からの作用として一番の鍵となったのは、昭和21年に日本に来たアメリカ教育使節団ですね。彼らの残したものが今の日本に非常に大きな影響を与えているんです」


(つづく)

子供は誰のものか<田下昌明氏 プロフィール>
たしも・まさあき   1937年、旭川市生まれ。医学博士。医療法人歓生会豊岡中央病院会長。北海道大学医学部卒、同大大学院修了。日本小児科学会認定小児科専門医、日本小児科医会「子どもの心相談医」、日本児童青年精神医学会会員、日本家庭教育学会理事、北海道小児科医会理事











Posted by 北方ジャーナル at 10:11│Comments(0)
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