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2009年05月15日

オリバー・ストーン監督の話題作『ブッシュ』

オリバー・ストーン監督の話題作『ブッシュ』

 5月14日夕、札幌シネマフロンティア8Fでメディア向けの試写会が行なわれた。上映されたのはオリバー・ストーン監督の最新作『ブッシュ』(原題は『W.』)である。

 そう、あの43代アメリカ合衆国大統領にして引退を控えた時期にイラク人記者から靴を投げつけられたジョージ・W・ブッシュ氏を題材にしたもの。本作は角川映画の配給でこの16日から首都圏などで公開される(道内は6月20日から)が、今回のイベントは、その直前のプレスアピールの一環だ。

 ここで映画評を書くつもりはないので、中身やストーリーは詳しく紹介しない。ただ私はけっこう楽しめた。オリバー・ストーン監督として歴代の大統領を扱ったのは『ニクソン』『JFK』に続き、これで3作目。2期8年に及んだ“ブッシュジュニア”政権の内実と彼の過去が交錯する展開を通して、ストーン監督は何を描きたかったのか──。

 それはブッシュ批判というより、アメリカという国の一種のリアリズムなのだろう。大量破壊兵器があると国民を騙し国連を無視してイラクに土足で踏み入った男、あるいは金融資本主義の跋扈を許し現在の世界同時金融危機を招いてしまった張本人…。だがストーン監督は単純にブッシュを揶揄したりこの映画を批判大会にはしていない。

 石油と政治という2つの畑で育った中西部のボンボンが、神からの啓示を受けたとして父を乗り越えるために大統領を志し、それが実現してしまった悲喜劇。ブッシュ前大統領政権下で起きた事柄の責任については、今後も厳しい目線が注がれていくことが予想されるが、それにしても私が思い出すのは、彼に熱狂していたかつてのアメリカだ。

「9・11」への怒りが戦争へと意識を向けさせ、ブッシュの早期イラク開戦論に万雷の拍手を送っていた米国議会、そして国民の皆様である。証拠もなく大量破壊兵器があると喧伝し、熟慮を求める国連を無視。「我々の側につくか、それともテロリストの側につくか」と世界を恫喝するほど彼はその時、暴走していた。が、結果として誰も彼らを引き止めることはできなかった。

 当時我が国でも小泉自民党が、この暴挙に全面的に追随したのはよく知られている事実である。開戦が間近に迫っていた頃、小泉首相が「(大量破壊兵器は)アメリカがあると言っているんだからある。国連よりアメリカの判断を支持する」旨の答弁を国会で繰り返していた姿を、私はいまでもはっきり覚えている。

 小泉純一郎という題材で一本映画にしてみるのもいいかもしれない。何しろドラマが多かったし。ちなみに題名は「純」。これ以外にないでしょう。

 話が逸れた。エンドロールに1964年発表のボブ・ディランの名曲「神が味方」が流れるが、本作のテーマと響き合って印象的だ。私は、この曲はディランが自国の病理を言い当て憂いたものと解釈している──。  (く)






Posted by 北方ジャーナル at 01:59│Comments(0)
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