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2009年03月31日

「アニマルウエルフェア」で畜産改革

「アニマルウエルフェア」で畜産改革

 相次ぐ食品偽装や「地産地消」の広がりもあり、店頭に並ぶ農産物が国産なのか、農薬が使われたのか--などを気にして食べる人は増えた。でも、肉や牛乳・乳製品、卵を口にして、それを提供した家畜たちがどんな環境で飼育されているのかを考える人は、残念ながらきわめて少ない。

「アニマルウェルフェア」という言葉をご存じだろうか。

 日本では「家畜福祉」と訳されてきた。「食べられてしまう家畜にも福祉が必要なの?」という誤解も招いているが、ウェルフェアの本来の意味は「幸せ、快適な状態」。動物の習性や生態を理解し、ストレスを減らして病原菌に対する免疫力を高め、家畜の健康と福祉を増進していく飼育方法のことをいう。

 05年には、日本を含む172カ国が加盟する国際動物保健機関(OIE)が家畜福祉ガイドラインを採択しており、加盟国には法令づくりなどの責任がある。遅まきながら日本政府も、畜種ごとの「飼養管理指針」の策定作業を進めている。(本誌連載の「“農と食”北の大地から」では数年前から、それらの経緯や現場の受け止め方などをリポートしてきた)

 そんななか3月29日、「世界が動く--アニマルウエルフェア畜産への改革」をテーマにしたシンポジウムが東京のJAビルで開かれた。主催したのは、日本の畜産改革の一つとして、従来の工場的な飼い方からストレスのない健康な家畜飼育への転換を唱えてきた、NGOの「農業と動物福祉の研究会」(松木洋一代表世話人)である。

「アニマルウエルフェア」で畜産改革 家畜福祉畜産(物)の先進的な取りくみを進める消費者や外食企業、食品加工・流通企業などの関係者によるワークショップと、東アジアの状況について海外専門家らによる報告--の二部構成。約300人収容の会場がほぼ満席になる盛況で、道内から参加した畜産関係者や研究者らの姿も見かけた。

 東京の共同購入グループ「大地を守る会」の藤田和芳会長は、10数年前から「畜産のTHAT´S国産運動」に取りくみ、提携先の岩手などの農場で“100%国産の穀物飼料”を実現したことを紹介。「びっくりドンキー」を全国展開する「アレフ」の庄司昭夫社長は、草だけで牛を育てる試みなどを紹介しつつ、「食堂業も食医であるべき。家畜を交えた5反百姓を」との持論を述べていた。

 畜産・水産物の中間流通業者・ニチレイフレッシュの富樫幸男さんからは、興味深い調査結果が示された。
 首都圏の消費者800人を対象に、アニマルウエルフェアの概略を説明し、消費者の求めるものをインターネット調査。認知度は20%に満たなかったものの、「家畜福祉に配慮した畜産物を購入するか?」との問いに70%を超える人が共感を示した。とりわけ50代女性の関心が高かったという。北海道の消費者の動向はよく分からないが、首都圏では、「健康でストレスのない家畜が良質の畜産物を届けてくれる」ことが徐々に浸透しているようだ。
 他にも、アニマルウエルフェアに配慮したブランド豚「トウキョウX」の取りくみや、自然放牧型の酪農で「森林ノ牛乳」を製造する京都の環境企業の試みなどが紹介された。そこからは、政府や道庁など行政の鈍い動きを尻目に、このテーマに民間企業が着実に取りくみ、新たな商機も見いだしていることが伝わってきた。
(アニマルウエルフェアをめぐる動きは、「農と食」シリーズなどでお伝えします)

(写真・文:ルポライター  滝川 康治)



Posted by 北方ジャーナル at 18:04│Comments(0)
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