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2008年07月09日

迷走する紋別市の福祉行政を取材

迷走する紋別市の福祉行政を取材
紋別市の郊外、大山町にある「安養園」には150人あまりが入所している

 普段は営業や企画記事の取材で訪れることが多いオホーツクの紋別市だが、今回は事件取材のために足を伸ばした。詳細は14日に発売になる8月号をご覧いただきたいが、紋別市が直接運営している複合介護福祉施設「安養園」の民間譲渡スキームをめぐって、同市の対応が迷走していると聞きおよび、地元を回ってみたのだ。

 さわりを少しだけ書いておこう。赤字運営の介護福祉施設を民間に譲渡することになり、「やりたいヒト、手を挙げてください」と市が募集した。結果、応募はひとつだけ。そしてその応募したヒトの仲間には前市長と前助役が入っていた。応募したグループを市長が任命した選ぶ係の皆さんがいろいろとお調べになり、「よろしい」ということになった。しかし、それをなぜか、土壇場で市長がダメを出してしまった──。

 簡単に言うと、こういうあらましである。それぞれの言い分や経緯などはともかく、ここでは、今回の事件の背景にある現在の福祉や社会保障の危うさにだけ言及しておこう。

 昨今の趨勢を見ていると、明らかに国はこの分野にも市場原理を持ち込み「自己責任」を理由に自らの負担を減らそうとしている。「大事なのは分かっていますがお金がないんです」という言葉の裏側には「増えてくるお年寄りにそんなお金を使ってられない」という官僚たちの動かしがたい本音がある。

 それが端的に表れているのが、介護保険制度のこれまでの流れだ。「医療と同じように国民に保険に入ってもらい、サービスが必要になった時は介護事業者への負担の多くは国が面倒を見ますよ──」

 始めた謳い文句はいい。ところがどうだろう。しばらく経ってみると保険料は上がってくるわ、サービスの必要性をなかなか認めてもらえないわ、介護事業者への支払いもしぶってくるわ──である。

 そしてその介護報酬の切り下げによって、介護事業者における労働環境の悪化が、いまや、あまねく広がっている状態だ。

 食事や排せつなどのサポートや日常生活全般にわたるケア、はたまたメンタル面での気づかいなど、介護の現場は実に体力と気力を使う。入院病棟といっしょで、交代枠があっても24時間、気が抜けないのが老人福祉施設だ。

 そんな激務であっても、雇い主は職員たちに月収で10数万円程度しか払えない場合が多い。理由は簡単だ。国などから事業者に支払われる介護報酬の額が、それ以上のベースアップを許さないのだ。利益を確保するどころか、破たんを避けるために経費を抑えるしかない構図となっている。

 ところが経営母体が「お役所」のところは、例外のケースもある。冒頭で記した「安養園」も、そのひとつ──。赤字であってもOK、民間よりはるかに高い給料でもOK、そしてスタッフ間で待遇に著しい格差があってもOK……。
 
 あらら、勢いにまかせて「さわり」を逸脱しそうになってしまった(笑)。──とまれ、何事も維持可能なスキームづくりなくして始まらない。そんなことを強く考えさせられる案件だった。

 ちなみに紋別名物の「海の幸」も抜け目なく楽しんで帰ってまいりました。いろいろあっても私は好きなマチである。今回の案件が、前向きな方向へ転換していくことを願わずにはいられない──。

迷走する紋別市の福祉行政を取材
市長の裁量権がクローズアップされた紋別市役所



Posted by 北方ジャーナル at 00:47│Comments(0)
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